火蓋を切れ!-高校防衛戦線-
この小説は全てAIが作成した物です。
それを踏まえて読んで下さい。
タイトル含めて自分では一切書いていません
夕焼けに照らされた校庭に、火薬の匂いが漂っていた。
黒ずんだ土の上、煙がまだ立ち上っている。破れた制服、転がる先込め式のフリントロック、そして倒れた他校の生徒――全てが「正当防衛」の範囲内だ。
「……もう来ないだろうな」
霧島カイは、肩に担いだ火縄銃をそっと降ろし、火皿の残り火を息で吹き消す。
カイは県立紫陽高校の防衛部所属。法改正によって認可された「教育機関における正当防衛活動」により、彼らは日々訓練を重ねていた。武器はすべて18世紀以前の前装式火器に限られていたが、それはそれで妙な風格と恐ろしさがあった。
「隊長、東門の偵察班から報告。黒影工業、残り二名撤退。完全に退いた模様です」
そう報告してきたのは一年の福田。目立たないが、撃たせれば百発百中の精密射手だ。
「よし。これで三日目の防衛成功だな。生徒会に報告して解散しよう」
カイは背中の銃をしっかりと固定すると、部員たちの顔を順に見渡した。疲れてはいるが、誰も死んでいない。それだけで、十分だった。
すべては二ヶ月前に始まった。
黒影工業高校――かつてはただの荒れた工業校だったが、新制度を逆手に取った彼らはすぐに武装を強化。改造マスケット銃、紙薬莢式の散弾、即席の野戦塹壕。教師の目が届かない放課後、彼らは他校への「防衛訓練」と称して越境侵攻を繰り返した。
紫陽高校も例外ではなかった。最初の襲撃は、何の前触れもなかった。
昼休み、カイが購買の焼きそばパンを買おうとした瞬間、東校舎の窓ガラスが破れ、火縄銃の弾丸が教室の黒板にめり込んだ。次の瞬間、武装した生徒たちが塀を超え、突入してきたのだ。
だが、カイたちは逃げなかった。
防衛部は、日頃の訓練を実践に移した。火薬を量り、弾を込め、火縄に火を灯す。呼吸を整え、距離を測る。――そして、撃つ。
その一発一発には、威嚇でも感情でもなく、確かな「意思」が込められていた。
それ以来、黒影工業と紫陽高校の戦いは続いていた。週に一度の頻度で行われる「校内侵攻」は、もはや公然の秘密でありながら、法の範囲内。なぜなら、使用されているのは全て合法化された旧式火器、しかも「正当防衛」が成立する状況だったからだ。
放課後、部室の畳に座ったカイは、銃の掃除をしている副部長の星野に尋ねた。
「……俺たちは、何と戦ってるんだろうな」
「制度、かな」
星野はそう答えて、火皿を丁寧に磨く。「国が法で縛って、制限をつけて、それを守ってるのに、結局やってることは戦争。――笑えるよな」
「……けど、俺はやるよ」
カイは自分の銃を見つめた。祖父から譲られた火縄銃。手入れを怠ればすぐに使えなくなる。だが、撃つときは静かに、正確に、そして確実に敵を倒す。
「俺はこの学校を守るために撃ってる。教師が見て見ぬふりをしても、生徒会が震えて逃げても、部がなくならない限りは」
「だから隊長なんだよ。お前は」
星野はにやりと笑った。
次の襲撃は、土曜の朝だった。
休日登校していた数名の部員たちは校舎の屋上に急行し、スコープ代わりの簡易望遠鏡で周囲を確認。校門前には、黒影工業の主力部隊――リーダーの「黒川」がいた。
「今日は本気って顔だな」
星野が息を飲む。
カイは黙って銃を構えた。火皿に火を灯す。手は震えていない。足元の土を踏みしめる。
黒川も気づいたのか、手を上げた。合図だ。
そして――
「火蓋を、切れッ!!」
轟音。煙。衝撃。
屋上からの一斉射撃に、敵前列が崩れる。返すように校門からも弾丸が飛んできて、カイの肩をかすめた。
「まだいけるか!」
「装填急げ!」
火薬を詰め、弾を押し込み、雷管を乗せる。連射などできない。だから一発に全てを賭ける。
戦いは三十分で終わった。
黒影は撤退し、学校には静寂が戻った。
夕陽が差し込む廊下を歩きながら、カイはつぶやく。
「次は、いつ来るかな」
「来ないといいけどな」
星野が肩をすくめる。
だが――彼らは知っている。
今日も日本のどこかで、誰かが古びた銃に火を入れ、「守るため」に撃っていることを。
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