45話
sideフォルク
------------------
子供の頃から、誰かに呼ばれて振り向くと誰もいない。そんな事がよくあった。
両親に話した時も最初は気にかけてもらえなかったけれど、ある時気づいたら体を揺さぶられている事があった。
「フォルク!フォルク!」
「⋯⋯⋯⋯なあに?ははうえ」
「あぁ!」
そう言って母に抱きしめられた。
それ以降、両親は常に私の動向に注視していたように思う。
それ以降も自分に降りかかる不思議な現象は続いた。呼ばれるだけじゃなく、自分が体の中に閉じ込められる感覚や、突然見ず知らずの者に友人だと声をかけられたりもした。
その都度両親がいつの間にか対処してくれていたが、どういうふうに収めていたのかは聞いていなかった。
そんな時、祖母が「どうする?」と聞いてきた。
よくわからぬままに頷いたという事があったが、それ以降も自分の不思議な現象は変わらなかったから、祖母と何があったかは今も思い出せない。
10歳の時、両親が亡くなって伯父に私のせいだと言われた時も、本当に自分のせいだと思った。何故なら事故の前後を私は覚えていなかったのだ。
今までも覚えていない事は度々あったけれど、両親の事故を覚えていないとは言ってはいけない感じがして、自分のせいだと伯父に言われるがままにした。
その後はずっと霧の中をさまよう感覚で生きてきた。
学園に入って2年ほどした時に、突然宰相の息子であるセドリック・ケトナーに「そういえば相談って何だった?」と聞かれた時は驚いた。
私には全く身に覚えがなかったから、体の奥にいる時に何か彼に相談しようとしていたのだと分かった。だが、何を相談しようとしていたのかなんて覚えていない私には答えられない。
だから「なんでもない、もういい解決した」と言ってそれ以上、詮索されない様に避けた。
そんなある日、急にお腹が空いたと感じた。
今まで私は空腹を感じた事があまり無かった。いつの間にか食事をしていたり、寝ていたり本を読んだりと自分の体を誰かが使って何かをしてる感覚が、年々強くなってきていたけれど、どうにかしようとしても、自分ではどうしょうもなかったからだ。
だが、その時は違った。
腹が減った⋯ただそれだけだが紛れもなくそれは自分だと感じた。
フォルク・サッセルンは今ちゃんと腹が減ってるんだと自己主張してるように思えた。
そして、それを思い切って執事に相談した。
その時、執事は泣いて喜んだ。
「お坊ちゃまがやっと戻ってきたのですね」
今は何となく彼の言葉の意味がわかる。
ホーリーに説明してもらったからだ。
でもその時はまだよく分かっていなかった、だが彼に相談したあと伯父夫婦が逮捕され、従姉も居なくなったりと私にとっては良い事が続いた。
でもその後、また同じ現象が起こる。
最近もホーリーが私の顔をいつの間にか覗き込んでいることがある。
心配そうな顔のホーリーに、私は大丈夫だよと安心させる言葉が吐けない。
最近思うのは、私はこの世界を生きているのだろうか?
本当はここに私はいないのではないか、
そんな思いで足元を見てしまうのが癖になってしまっていた。




