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3話

「何故、とお聞きしても?」


「当然だな、宰相話せ」


私の疑問に答えたのはその場に控えていた宰相だった。

そうか、彼はこの為に此処にいたのだと合点がいった、という事はこの話は国王も承知、もしかしたら議会も一致しているのかもしれない。

私は心の中で大きく深呼吸をしたつもりだったが、実際に深呼吸をしてしまっていた。


「はぁ〜〜〜ふぅ〜〜〜〜〜」


その大胆な行いに王妃は笑って、宰相は目を瞠っていた。

先ずは2年前に起こったサッセルン侯爵家の醜聞を、私が知ってる範囲で話して欲しいと宰相に言われた。


私は15歳だったが、その話はデビュタントで知ったのだった。

このタッセル王国では15歳から16歳でデビュタントを迎えるのが一般的だった。

私も両親が用意してくれた真っ白なドレスに、国王と王妃から頂いた白い靴でその日を迎えた。

パートナーは父との勝負に勝った2つ上の兄がしてくれた。

一人ずつ名前を呼ばれ入場して、そのまま国王の元へ挨拶に伺う。

何故か私よりも緊張する兄は、つんのめりそうに歩を進めていたので、私はバランスが取れず転けそうになっていた。

それを助けてくれたのが襲名したばかりのサッセルン侯爵だったが、彼が助けたのは倒れそうな私ではなく、つんのめりそうな兄の方だった。

私はその兄に慌てて引き上げられて転ばずにすんだのだ。

二人で御礼を言って頭を下げたら何故か周りがザワッとした。

それに気付いた彼はその場をさり気なくであったが後にしたのだ。

それから私と兄はザワつく周りから侯爵家の醜聞を聞かされる羽目になった。


話したのは父の叔母であるメイト子爵夫人だった。

彼女は口から生まれたのかと言わしめるほどの噂好きなご夫人で、両親は苦手にしていたからプライベートで親しくすることは無かった。

それでも公の場で会った時は親戚づきあいもする。

それが彼女の話を聞いてあげることだった。

辟易しながらも、これも社交と腹を括って甘んじてその洗礼を受けた。

だが他人事だからだろうか、メイト子爵夫人(かのじょ)の話は私にとっては意外に面白かった。

要はサッセルン侯爵家のお家騒動だったのだ。


サッセルン侯爵家には二人の男子が生まれた。

あまり出来の良くない兄と聡明な弟、当時の侯爵は後継を弟と決めた。

出来の良くない兄には侯爵家の従属爵位である子爵位を譲ったそうだ。

だが数年後サッセルン侯爵が10歳の時、両親が相次いで亡くなった。

そして物語でも良くあるようなお家乗っ取りが始まった。

サッセルン侯爵家に移り住んだ子爵は、幼い彼の後ろ盾とは聞こえはいいが、その実はハイエナになったのだ。

彼の資産を悉く蝕んで行った。

それが2年前彼が到頭成人を迎えるに中って、伯父夫婦は彼を亡き者にしようとしたところを御用!

騎士団に捕まり伯父夫婦は国外追放になった。

行き先はタッセル王国の北側の隣国、そこの鉱山で強制労働付きの国外追放だった。


という話を、聞かせてくれたメイト夫人の口調を真似しながら、私は宰相と王妃に話して聞かせた。

王妃はケラケラと笑い、宰相は笑いを堪えてる、周りにいる侍従は体が震えている。

話の内容は笑える話ではないけれど、メイト夫人はとかく“ざぁます”が多い夫人なのだ。

どんなに深刻な話でも彼女の“ざぁます”が凌駕してしまう程である。


そのお家乗っ取りの寒々しい話を、思いもかけずその場の笑いを呼んでしまった私は、少しだけサッセルン侯爵に申し訳ないなと思ったざぁます。






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