35話
「フォルク様、私がフォルク様について体験した事をお話しますね」
未だに俯いたままのフォルク様に話しかけると、彼は顔を上げて何かを期待する顔をしたのだけど、ごめんなさいフォルク様、私は解決策を話すわけではないのです。話を繰り返すだけなのです⋯残念。
「あのですね、私フォルク様に憑いていた方とお話しさせて頂いたのです」
「私に?」
「はい、その方は女性でした」
それから私は“郷田花様の話をフォルク様に聞かせました。異世界という所からやってきた彼女が私の母の祖国の石版に刻まれた、長年解読不能だった古代文字が読める事、そのために隣国に訪っていた事、フォルク様が我に返ったときに彼女の意識は跡形もなく消えてしまった事を身振り手振りを交えて、どうにか解ってもらえるようにお話しました。
フォルク様はおそらく自身の中に入った人達の事をきっとご両親からも聞かされた事はなかったのかもしれません、いえ話を聞いていたとしても忘れてしまうのかもしれません。何故ならやはり彼は以前した私の話を覚えていないようだからです。彼は目を剥いて食い気味に聞き入っておられました。ですので私はもう持論だけを話す事にしました、フォルク様が何者になろうとも、それを覚えていようがいまいが結局やる事は変わらないのですから。
「それでは、その人はどこに行ったか分からないということか?」
「えぇ今の所は」
「今の所?」
「私は一つ仮説を立てております。でもそれがあってるのかはわかりません。ですがそれでもフォルク様は知りたいですか?」
「⋯⋯⋯あぁ君の仮説とは?」
「私、おそらく郷田花様はこの世界の何処かにいらっしゃると思うのです。その根拠はあの石版です」
「石版?」
私は私の仮説をフォルク様に話しました。
その仮設とは⋯。
母の祖国に残された石版に刻まれた古代文字は『日本語』という異世界から来た郷田花様達の扱う言葉でした。それが示すのは遥か昔から私達の住むこの世界に郷田花様のような方が居たということです。そしてその方達は確実にこの世界に住んでいたということ。何故なら残されているのが『石版』だから。
石版は文字や模様を書くものではなく『彫る物』
彫るにはそれなりに時間がかかります。
1週間や2週間位であんなに長い文字は彫れません。
「ですから、確実に生身の人間としてここにいたことになるんです」
「⋯⋯」
「わかりませんか?フォルク様のような体質の方が遥か昔にいたとしても、その体では彫れないんですよ、だっておそらく郷田花様だけでしょう?1年もあなたの体に居たのは。他の方は一週間から10日長くても1ヶ月、そんな人が石版に態々『日本語』を残すとは思えません、そんな事をする意味もあるのかわかりません」
「では、どこに?」
「それはわからないです。ただ本来はこの世界の何処かにちゃんと体があるのではないでしょうか?それが例えば馴染めなかったりした時に一旦フォルク様の中に入ると考えたらどうでしょう?」
「は?そんな馬鹿な!」
「まぁ信じられないのも無理はないですが、あくまでも仮説ですので聞き流してくださって結構です。でも私、ちょっと自信あったりするんですよね。でもそれと、今抱えてる当面の問題とは関係ないので」
「関係ないのか?!」
「えぇ、ありません。ただ私がフォルク様に知っておいて欲しかっただけですから。ここからは解決策ではありませんが、応急処置として話しますね!」
「応急処置?」
先程からフォルク様は面食らったように疑問ばかりを繰り返しますが、私は構わず話し続けました。
人を丸め込むには勢いが大事です!
やっとフォルク様は私とケトナー卿に少しですが、心を開いたのだと判断しましたので、ここで一気にいこうと思います。
「フォルク様!私を信じて任せてくだい!」
私の言葉にフォルク様は目を瞠りました。
アラッ?声大きすぎました?
淑女に有るまじき行為ですわね、ホホホホでもご容赦を。




