34話
「両親が亡くなったときに伯父に言われたんだ、私が両親達を殺めたと」
「まさか!」
「そう、今思えばそんな筈はないだよ。10歳の私が馬車事故を画策するなどあり得ない。でもその時の私は偶に自分が分からなくなるし、事故の前後を全く覚えていないしで、ついその言葉を鵜呑みにしたんだ。もしかして、ひょっとしてと思って」
「⋯⋯⋯」
「それからはもう何が何だか分からなかったよ。自分が何をやってるのか何を言ってるのかも分からないことも度々あるし」
「まぁ⋯」
私は俯きながら乾いた笑みを浮かべて話すフォルク様が痛々しかった。
「そんな自堕落な時だった、伯父に殺されそうになったのは」
「⋯⋯っ!」
私は自分が息を呑む音が耳裏で聞こえたようか気がしました、そんな衝撃な言葉を意図も簡単に口にするフォルク様の目が暗くて胸が詰まされます。
私の後ろでも同じ様に口元を手で抑えるケトナー卿の気配を感じました。最近では彼の仕草が気配で分かるようになった私ですが、ひょっとしたら後ろに目でも発現したのかしら?と不思議に思います。
「2度目に仕掛けられた時だったかな、その頃も私は誰も信用できなかったけど、思い切って執事に相談したんだ、どうせ殺されるなら自分の秘密を話してみようってね、両親には口止めされてたからそれ迄執事も知らなかったんだ。彼に話してからの展開は恐ろしく早かった」
「あぁそれが子爵の悪行の発覚に繋がるのですね」
私の言葉にフォルク様は頷きました。
「それからも時々記憶がない事はあったんだ、でもそれ迄は長くても1週間ほどだったのに。今回はきっと長かった。だから思わず目覚めた時に隣国にいた事も君の事も直ぐには理解が及ばずに失礼な態度を取ったと反省してるんだ」
郷田花様は今までの憑依最長記録だったのですね。そうですわよね一年は長いですわ。
ここで私は気づいたのですが、どうやらフォルク様は以前隣国で私が話したことを忘れてしまっているようです。
何故そう思ったのかというと⋯郷田花様が憑依して隣国に行ったのだと、私は確かにあの時彼に話をしています。それなのに⋯。
まさかとは思いますが、あの時も誰かに憑依されていたとか?
そう考えてブルリと体が震えました。
彼は元々人格が複数いるのかしら?
いやちょっと待ってそれは考えすぎよね?
私の脳内は⋯⋯はい!パニックです!




