20話
そして厄日は続く⋯⋯。
『メイナ・ルビン』彼女は平民なのでメイナで通じるけれど、メモの主ではあった。
私の野生の勘は大当たりで一歩前進と思ったのも束の間、彼女の思考に付いていけない。
いやひょっとしたら彼女の持論が合っていて、私が彼等と相容れないのかもしれないわね。
これは早急にサッセルン侯爵に確認しなければならないと思った。
メイナ曰く
彼女とサッセルン侯爵は恋仲でそれは周知の事実らしい、私は全く聞いたことはなかったのだけど⋯。
ソニアもそんな事は言ってなかったように思う。
そして彼女は続けた。
いつも二人はお互いを心の底から思い合っていて、常に目と目で会話をしていたらしい。
手が触れそうで触れない距離で泣きそうになるほど切なくて、そんな逢瀬を繰り返していたそうだ。
サッセルン侯爵が言っていた“心に決めた人”とは彼女のことだったのだろうか?
実在していたとは思わなかった。
てっきりあの台詞はミナリーにでも言わされたのかと思っていたから、ちょっと意外だった。
ただ触れそうで触れない?とか目と目で?とかの件が逢瀬になるのかな?と、目の前でうっとりした目で話す彼女に付いて行けないのだ。
そして今私が困っているのは彼女が私の事をどう捉えるかと言う事だ。
メイナがサッセルン侯爵と恋仲であろうがなかろうが正直私にはどうでも良い。
取り敢えず肝心なのはあのメモの内容に何処までの信憑性があるかという事なのだ。
姉様(王妃)は兎に角フォルク・サッセルンを立派な侯爵になるように導きたい、その上で命の危険があるならばそれを排除したいと考えているのだ。
その為に態々王妃命まで使って私と婚約させたのだから、そしてそれは婚姻までいかなければならない。
それは王家の面子の問題だ。
例え調査の結果彼に危険がなかったとしても、既に王妃命は出されている、だからそれは覆らない。
だとするならば早めに現実を突き付けたほうがいいのかしら?
でもそうするとライバル認定されて話してくれなくなるかも知れない。
私は頭の中でアーでも無いコーでも無いを繰り返していた。
そんな私の思いはどうやら杞憂だったようだ。
彼女はケトナー卿相手に勝手に話し始めていた、私の存在は彼女の中では⋯⋯何なのだろう?
嬉嬉として、馴れ初めから順番に話し始めたメイナだがケトナー卿は無表情で聞いていた。