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19話

今回のお話は身体的な特徴を貶める描写があります。


騎士団の裏手に洗濯場がある、そう聞いていたのだけど騎士団が広すぎて裏が何処か分からない。

何処もかしこも裏に見える、ひょっとして私と私の侍女は“方向音痴”だったのかしら?

初めての経験で戸惑っている私に侍女のエルナが追い打ちをかける。


「ホリシオン様、だからケトナー卿を待ちましょうと言ったではないですか!」


「貴方だって!探検みたいで面白そうでございますね、何て言ってたわよね」


「それを止めるのが主の仕事ですわ」


「その主を諌めるのが侍女の仕事でしょ」


私とエルナは全く持って不毛な言い合いを繰り広げていた。

丁度その時、顔見知りの騎士が私の目に入った。

以前姉様のお側に居たのを見たことがある方だった、確かお名前は⋯⋯


「スベリヤ卿!」


あっ!振り向いた、うろ覚えの名前だったけれど合っていたみたいでホッとする。

この方の頭部の特徴でお名前を覚えていたのよね、良かった。


「これはこれはスタンピン伯爵令嬢では御座いませんか、こんな所にいらしたのですね、セドリックが方々探しておりましたよ。因みに令嬢、私の名前はスティリヤです。アンドレ・スティリヤ、以降はもしよければアンドレとお呼びください」


「あら、お名前を間違えたなんて!申し訳ございません。そっそうですわね。名呼びを許して頂けるなんて光栄です、アンドレ様」


アンドレ・スティリヤ様はスベリヤ様ではなかったのね、間違えて覚えていたみたい。

とても失礼なことをしてしまったと顔面蒼白になった私は何度もエルナと共に頭を下げた、後でお詫びも届けなければ。

それよりもケトナー卿が探し回っているなんて、その方が問題になりそうだ。


「セドリックの所へご案内しますよ」


スベリヤもといスティリヤ卿は、私に手を差し出してくれた。

エスコートをしてくださる模様、本来なら婚約したばかりの私はお断りしなければいけないけれど、婚約は公になってはいない。

それに先程の失態も合わせて、断る選択肢を持てなかった私は素直に手を重ねた。


そのまま少しだけ進むと騎士団内の一室に案内された。


「ここでお待ちください、セドリックに連絡してきます」


そう言ってスティリヤ卿は部屋を出て行った。

数歩のエスコートだったから、私はホッと息を吐いた。


「お嬢様、本来ならば⋯⋯」


「分かってるわよ、でもお名前を間違えていたんですもの、固辞出来なかったの!」


「なんでまた、そんな間違いを?そもそもお嬢様は人の顔と名前は興味のある方しか覚えないのに、声を掛けられたとき驚きましたわ」


「それが、前にお会いしたときに王妃陛下の庭だったのだけど、後ろに控えていた彼が私の真正面で。わたしは眩しくて眩しくて、目が開けられなかったのよね。後でお名前を聞いたときに脳内で勝手に変換しちゃったのかもしれないわ。だってツルツルで滑りそうでしょ。スベリヤってぴったりって覚えちゃったのよ」


「なんて失礼なことを!奥様と旦那様にはしっかり報告させて頂きますわ」


「⋯⋯⋯はぁい」


私は力なくエルナに返事をした。

今日はお母様に怒られる事必至ですわ。

暫くエルナと軽口を言い合っていたら、急いだようなノックの音が響き、エルナが扉を開けると汗だくのケトナー卿が部屋に入ってきた。


「ホリシオン様!騎士団は広いのです。勝手にうろつかれたら探すのも大変なんですよ!」


ケトナー卿に青筋立てて怒られた私は、迷ったり間違えたり怒られたりと全て自分の行いが原因なのに『きっと今日は厄日なのだ』と決めつけていた。





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