17話
「え〜そうかなぁ」
私の見解を話すとソニアは頬に手を当てて疑問形で返してくる。
「王妃様は何回かしかお会いしていないけれど、何時も出来ることしか仰らないと思うのよ。それをどんなミッションか知らないけれど婚姻に絡めて⋯⋯?なんか無理があるけど⋯」
ソニアは何度も言うが子爵令嬢だ。
その身分で何度か王妃と会えてる時点で並の令嬢ではないのだが、彼女はそれが特別だとはとんと思い当たらないらしい。
でもソニアの見解も強ち間違いではないと思えてきた。
(姉様の考えねぇ、何だろうミッションとは違うのかしら?)
「ねぇソニア、ミナリーの悪エピソードって他にあるの?」
「う〜ん、あるけどこれって私の見たことだけどいいの?」
私が頷くとソニアは話し始めた。
「サッセルン侯爵家には、私の家のように領地を任せる傘下の貴族が居るの。ミナリーの家もそうだったのよ。まぁご当主が元々侯爵家の人だから、あの家族は自分達を子爵家だとは思ってなかったみたいなのよね。特に子爵夫人は」
「子爵夫人というと、そのミナリーのお母上?」
「そうそう、彼女は侯爵家の長男の婚約者だったっていうか、元々の婚約者は他にいて、体を張って婚約をもぎ取ったみたいなんだけど」
「は?」
私は、その小説のような略奪の方法を、実際にした人を初めて聞いて目を丸くした。
そんな事ほんとうにするひとがいたなんて!
しかもそんなのに引っかかる人がいるなんて!
目を丸くした私の顔を苦笑しながらソニアは続けた。
「まぁ彼女にしたら計算が狂っちゃったのよね、体使ったのに意味がなくなっちゃって。でもお手付きになれば他に嫁ぐ訳にもいかないでしょう。渋々嫁いだみたいだけど、父達から言わせるなら彼女の存在が長男を後継から下ろす決定打になったのよ。本人は認めたがらないけどね」
私は頷いた。
それはそうだ、そんな安っぽいハニトラに簡単に引っかかる者を後継になんかしたら一族郎党、領民達まで露頭に迷う羽目になる。
前々侯爵のお考えは間違っていないわ。
でもやはり息子は可愛かったのかもしれないわね。
従属爵位を与えたんだから。
「両親がそんな考えだからねミナリーの態度もそれと同様だったわ。傘下の集まりの時も酷かったの。私は女王だ!みたいにね。だけど男の子の前だとコロッと態度をかえるのよ、見た目が庇護欲を掻き立てられる感じだから」
そう言いながらソニアが少し顔が曇るのを感じた。
「如何したの?」
「一人、ミナリーの標的にされた子が居たの。その子を落として自分を上げるのよ。知らないうちにその子は何処かに行っちゃって⋯」
「如何してその子は標的に?」
「キレイだったからじゃないかな?私の様に地味だと歯牙にも掛けなかったけど、その子はとても綺麗だったから。サッセルン侯爵も仲良さそうにしていたし」
「ソニア!その子の名は?」
ソニアは思わず大きくなった私の声にたじろいだけれど、その女の子の名前を教えてくれた。
何故かは分からない、だけど私は直感でその子を知らなければならないと感じたのだ。
私の感!
野生か!
でもそれが大当たりだった。