15話
ソワソワしながら半日過ごしてやっと昼休みになった私は、ソニアを引っ張って食堂に一番乗りでランチボックスを購入した。
秘密の話をするならいつものようにランチを食べるわけにはいかない。
人目を避けて学び舎からかなり離れた所のベンチを見つけた。
「ホーリーここ遠すぎない?」
「ここまでは誰も来ないでしょう、そんなことより朝の話よ!私今日授業が1ミリも頭に入らなかったわ!」
「いや、それいつもの事じゃない!貴方が授業ちゃんと聞いているの見たことないわよ。親友に嘘つけると思ってるの!」
ソニアに図星を差されて私は苦笑した。
まぁこの学園の授業の内容を私は入る前に習得しているので、敢えて聞く必要はないのだ。
本当ならここでは無くシセマイン王国の学園に始めから通うつもりだったのだ。
父の猛反対とソニアの存在だけで此処に通ってるに過ぎない。
「それは⋯もういいじゃない!取り敢えず教えて!如何して貴方が国家機密を知ってるのよ」
「えっ?そんな話なの?この婚約」
ソニアが何を以てこの話を知ってるのか分からない私だったけど、ソニアはこの婚約を今は公にしないことしか知らなかったようだ。
しょうがないから王妃命だという事だけ話したが、それはソニアも知っていることだったみたい。
「貴方、うちの事よく知らなかったらしいから、これを機会に知っておいて欲しいわ。もしかしたらずっと家同士で付き合うかもしれないのだから」
「どういう事?」
肩を竦めながら話すソニアに私は益々分からない。
だけどちゃんと説明されたら彼女の言わんとする事が漸く理解できた。
それは簡単な話だった。
彼女は父親と揃ってサッセルン侯爵から直接聞いていた。
それもかなり前に聞いていたようだ。
だからソニアにしてみればいつ私が話してくれるのだろうかと、今か今かと待っていたみたい。
ソニアがこの婚約を聞いたのは1ヶ月前だったそうだ。
何を隠そう!というか全く隠しておらず、ただ私が知らなかっただけなんだが、ソニアの家カルタイン子爵家はサッセルン侯爵家の傘下の家だった。
しかもソニアの家が預かる領地は超が付くほどサッセルン侯爵家にとって大事な地であるらしい。
2年前、襲爵したサッセルン侯爵を何かと相談に乗っていたのもソニアの父であったらしい。
「えぇ!!私初めて知ったわ」
「そりゃそうでしょ、初めて言ったもの。ホーリーはサッセルン侯爵に興味なかったでしょ。言う必要性を感じなかったもの」
確かに自分の興味のない貴族の話など聞いたところで私が覚えているとも限らない。
だったら話すだけ無駄よね。
ソニア貴方は正しいわ。
そして、ソニアには申し訳ないけどおそらくだが、サッセルン侯爵の所作の指導をしたのはソニアのお父様、カルタイン子爵だったのかもしれない。
だから高位貴族の所作とは比べられないものだったのだと腑に落ちた。
「じゃあソニア、貴方ミナリーという女性を知ってる?」
「そうよ!その話をしたほうがいいと思っていたの。勿論知ってるわよ、あの疫病神の事は。でも侯爵はあの人を女神だと思いこんでるのよ、貴方何とかしてやって」
サラッとソニアは私に無理難題を押し付けようとしてることに気付いたけれど、疫病神とまで言わしめる女性に私は興味が湧いてきた。