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14話

「お母様、サッセルン侯爵の所作が私、とても気になっているのです」


「どういうことです?」


私は先程のお茶会の話を両親に話した。


「本当はケトナー卿に赴いて頂こうかなって考えていたのですが、そうすれば侯爵家の内情も探れますし、高位貴族のマナーであればサッセルン侯爵も教師を派遣される事に否は無いと思っていたのです。ですが目覚めたときの侯爵の様子を見るにケトナー卿では了承しないと思えます。だからといってただ教師を派遣しても意味がなくて⋯何方かお心当たりございませんか?」


私の言葉にケトナー卿は益々顔色を悪くしたけど、現実を見つめてもらわないと困るのよ。

(だって侯爵様、貴方を受け入れそうにないでしょう?)

私はケトナー卿にそう目で訴えたけれど、彼には宰相の様に“察する”能力は無かったようで、キョトン顔をされてしまった。

あぁ宰相!

貴方とのアイコンタクトはとても良かった。

とても懐かしく昨日の事のように思い出せます⋯⋯昨日だった。


両親は二人で話していたけれど如何してそうなったか分からないが、父がサッセルン侯爵家に一度出かけることに決まった。


その後、目覚めたサッセルン侯爵を晩餐に誘う。

彼は倒れたばかりなので軽めの食事をゆっくりと召し上がっていた、たまに母をチラリチラリと目が泳ぐように忍び見ている。

彼の意思に反して、全く忍んでいなかったので、父の皿の肉はとても細かく刻まれていた。

(お父様怖いわ!)男の嫉妬って怖い物なのだと私は学んだ。

今後に役立つ?かしら。


こちらの提案が食事をしながらだったのは、いい判断だったかもしれない。

彼は一緒に食事をした私達の所作を見て彼なりに思う所があったのだと思う。

遠慮しながらだったが概ね父の提案を受け入れ教師の派遣と父の訪問を了承した。


私は心の中で(よしっ!)とガッツポーズを決める。

第一段階はクリアだ。


取り敢えず後のことは両親に丸投げした。

私はまだ学生なのだから、学生の本文は勉強、勉強!

昨日からの憂いが無くなって私はその日ぐっすりと眠れた。


◇◇◇


翌日学園の門の前では、何時もと違い親友が私を待っていた。


「おはようホーリー!待ってたの〜」


休み明けに教室ではなく門の前で待たれるなんて初めての事で、私は戸惑いながら親友であるソニアを見つめた。


「おはようソニア。如何したの?珍しいわね、私の出迎え?」


子爵令嬢でもある彼女に揶揄うように告げると意味深な目をしながら、ササッと早足で彼女は私の横に並んだ。


「貴方婚約したでしょう」


ソニアの耳打ちに私は目を丸くした。

驚きすぎて声が出ない!

何故彼女が知っているのか、私には理由がわからなかった。

私とサッセルン侯爵の婚約は一昨日秘密裏に決定して、まだ公にはなっていなかったからだ。

しかもまだ姉様より発表は控えるように言われていた。

第一段階である、侯爵家に内偵を送り込むまでは、秘匿事項とされているのだ。

思わず私はソニアの口を手で覆った。


「⋯⋯なっ!#♯<∧÷≒₵§」


私に塞がれたソニアの口は意味不明な言葉を発していたけれど、キョロキョロと周りを見ながら私は彼女を木陰に引っ張りこんだ。


「ソニア!如何して貴方が知っているのよ!」


なるべく声を抑えながら怒鳴るという神業を披露しながら私はソニアに詰め寄った。


「ホーリー⋯⋯。常々貴方が我が国の貴族に興味がないのは分かっていたけれど、親友の家くらい正確に把握しといて欲しかったわ。私にも興味が無いの?」


「何言ってるの?ソニアは私の親友でしょ!貴方には興味津々だし。だけど貴方の家自体には興味はないわ。だって貴方の家が何であれ、あなたは貴方だもの」


私は親友の言葉に反論した。

彼女はカルタイン子爵のご令嬢だが嫡子に当たる。

将来の子爵なのだ。

私としてはそれだけ知ってれば充分だった。

キャラメル色の髪にプルシアンブルーの瞳を持つ彼女は、私と同じく見た目は全体的に地味だ。

幼少期のお茶会で私達は出会い、派手さが尊いと云われる貴族子女達の中で、色味が地味という共通点もあり意気投合した。

それ以来の親友なのだ。

家格は私が伯爵家ということもあり此方が上になるけれど、私にはそんな事関係ない。

ソニアはソニアで私の親友、ただそれだけで良かった。

伯爵令嬢というだけでない、変な権力を持ち合わせてしまっている私には、ソニアの存在は唯一自分をさらけ出せる人でもあるのだ。


「質問の答えになってないわソニア!如何してフグッ」


今度はソニアが私の口を塞いだ。


「ホーリーの方が声大きいわよ!やっばいなぁ。私まだ死にたくないわよ!本当か如何か貴方の反応を確かめたかっただけ。本当なのは分かったわ。それとうちの事もちゃんと説明するから、続きはお昼休みにね」


ソニアはそう言って私の手を引いて木陰から出た。

私はソニアに手を引かれるがままに歩を進めていたが、頭の中は真っ白だった。







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