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デイリーミッション3日目 キャッチボール

「翠ちゃんってジャンクフード食べないのか?」

 目の前で朝食を食べながら緑さんはそう言った。

「いや食べてるじゃないですか。ほら白米」

「いやいや白米はジャンクじゃないでしょ」

「海外が全粒粉以外の小麦粉をジャンクと見なす指標に従えば、精白された米はジャンクだと思いますけれど」

「白米がジャンクだったら玄米は屑以下だよ」

「玄米に何か恨みでもあるんですか、和風なのに」

 緑色の髪を伸ばした緑色の着物姿の美女は玄米に何か恨みを抱いているのだろうか。

 美女でもそこまで髪が長くはない私は白米に対して恨みは持っていない。

「いい? 翠ちゃん。玄米の野郎はね、腸内のバリアを傷つけるんだよ。だから炎症やアレルギーの原因になったりするの。それに抗栄養素が多いからどちらにしても白米に軍配が上がってしまうのよねえ」

「コウ栄養素?」

「反栄養素とも。ミネラルの吸収を妨げちゃうの。腸が弱ってなければ玄米で体調を崩さないと思うけれど、現代人で腸の調子が良い人は何人いるかねえ」

 そう言った緑さんはずずずっと味噌汁を啜る。

 というかこの人? ひとと呼んでいいのか? 人型? まあ、緑さん。緑さんは食物の影響を受けなさそうだし、私を気遣ってくれているのだろうか?

「私の腸って弱っていたりします?」

「うん。まあ、翠ちゃんに限らず現代人は腸が弱っているねえ。高ストレス社会で簡単に胃腸がダメージを受けるのに、みんな放置するからね」

 じゃあ、テストや受験、アルバイトでもダメージを受けていたのか。

「脳と腸は繋がっているからね」


 ふたりで手を合わせごちそうさまをした後、KDMのアプリを開いた。

 現在2,360DPay

 今日のミッションタスクは

 1:キャッチボール:100回:1,815DPay

 2:筋トレ:ランジ100回:3,630DPay

 3:ラッキング:45㎏/16㎞:1,815,000DPay

 相変わらず3番目のタスクの報酬がヤバイ。でもやる人いるんだろうな……。

「この3番のラッキングって何ですか?」

「有酸素運動の一種? で45㎏の重りを背負って16㎞歩くやつ」

「それ死ぬのでは……」

「今の翠ちゃんが挑戦したら30㎝でリタイヤだろうね」

「はいはい、お金に釣られてたら死んでました。それではさっさとキャッチボールに行きましょう」

「ちょっと待って、はいこれ」

「マジ……ですか?」

「マジ」


 緑さんが渡してきたのは肩ひもが広めなスポブラに、レギンス。そしてフルジップのパーカー。胴の長さが短めでどうあがいてもお臍が出てしまうだろう。

 緑さんは瞬く間に同じものを身に纏っており、視線をこちらに向けて圧をかけ始めている。

 おススメのリストを貰っておきながら選択を後回しにした結果だろう。

 それに昨日彼女が身に着けていた歩く18チキンのようなものを渡されていない以上、もう私に選択する余地はなかった。


 同じ型のトレーニングウェアのペアルックなふたりは近所の公園で金色のゴムボールを投げ合っていた。

 翠は胸隠して臍隠さずと言った所だったが、認識される心配がないのか緑はパーカのジップを上げておらず、ボールを投げるたびに青りんごが左右上下に揺れていた。

「緑さん、これ百均のボールですよね」

 翠と緑の距離は10mも離れておらず簡単に会話が交わせる距離だった。

「そうだね」

「どうしてですか」

「だって今の翠ちゃんじゃ、野球ボールキャッチできないでしょ」

「歯を折る自信があります」

「ソフトボールは?」

「鼻を折る自信があります」

「テニスボールは?」

「突き指する自信があります」

「…………だからだよ」

「……ありがとうございます」

 金色の柔らかいゴムボールが行ったり来たりして計100回。

 1人当たり50回投げ終え、KDMを開きタスクを完了させた。

 1,815DPayが入金される様を見てほんの少しだけ危機感を抱いた。

 翠よ、これでいいのか?

 

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