いーち
「らら、らら。」
「のの、のの。」
「ねえ、らら。」
「どうしたの、のの。」
「ららは、ののの一番でいてね?」
「…。いいよ!ぼくは、ののの一番!」
先に呪いをかけたのは。
昔の話。
もう、何年も前の話。
まだ、私たちが無邪気に笑いあっていた時。
まだ、すべてが壊れていなかったとき。
◇◇
「のの。何してるの?」
「本読んでるの。」
「のの、本さん面白い?」
「らら、うるさいー。」
「だってのの答えてくれないんだもんー。」
「しゅーちゅーしてるの。」
「しゅ?なにそれ。」
「頑張ってるってこと。」
「よくわかんない。それよりもののと遊びたいのー。」
「…もう仕方ないなあ。」
「やったあ!ののだぁい好き。」
「はいはい。ののも大好きだよ。」
「え、ほんと?のの、僕のこと好き?」
「うん、好き好き。」
「えー、ほんとかなあ。僕の目みてよののー。」
「あーもう早く遊ぶんでしょー。」
「えへへ。」
楽しかった。ののは僕とずっと一緒にいてくれたし、なんだかんだ言ってののは僕のことを好きでいてくれたから。
中学生になった。
ののは、交通事故に遭った。
両親と妹を亡くしたののは、家族の中でただ一人だけ、生き残った。
その代わり、それまでの記憶を無くした。
「え?のの、僕のことわからないの?」
「……。誰。」
「僕はね、ららだよ。僕は、ののと友達だったんだよ。」
「……。そう。」
ののは人気者だったから他にも友達がいた。
許せなかった。
今までは、僕と親友だったのに。ののの一番は僕だったのに。
僕だけだったのに。
「のの。キノコとタケノコどっち派?」
「なんだそれ。」
「長い長い決闘話だよ。」
「キノコとタケノコかー。キノコのほうが強そう。固いし。」
「もー、そういう話じゃないんだよ。」
「ほんとららくんとののちゃんは仲がいいよねえ。うらやましい。」
「何がうらやましいのさ。ららが私に付きまとってるだけじゃん。」
のの、ひどいなあ。
そんな風に、思ってたんだ。
やっぱ、きついなあ。
あはは。
無理。
無理。
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理。
ののは、僕の親友なんだよ?
「ねーのの。」
「何。」
「どーしたら僕はののの一番になれるのかな?」
「…一生なれないと思う。」
「何で?」
「だって…。私の家族を殺したのは、ららだから。」
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