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すれ違いだらけの俺の運命  作者: 甘衣 一語
友情とその他
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クリスマス

 月日は流れ12月に入り、大学内や街がクリスマスムードに変わる。

 そのせいか、慶人も以前より浮き足立っている気がする。

 とはいえ、俺にクリスマスの思い出はない。親2人はクリスマスも仕事で、兄も友達とパーティーでその日だけは俺に構わない。自分だけの1人だけになれる唯一の日だった。

 その静けさを噛みしめながら、1日の終わりを待つのが俺にとってのクリスマスだ。

 だから、早く正月にでもなって欲しいのに時間は皆に平等だ。

 正月にも盆休みのように6日間の休みがある。今まではこの期間でも墓参りに行っていたが、今年はまだ計画が立てられていない。


「だから、響ちゃん。クリスマスは大切な日なの。それをなんでバイトで潰すのさ。」

 相変わらず大学のカフェテリアでの会話だ。

 大学が休みに入ってからの予定について、が今日の話題だ。

「クリスマスつっても俺には恋人もいねーし、家族もいねーからバイトしてもいいだろ。」

 俺が知っているクリスマスの知識なんて高が知れているが、確か恋人や家族と一緒に過ごす日だった気がする。

「確かにそうだけど、だからってわざわざバイトしなくてもいいじゃん。僕たちと一緒に過ごそうよ。」

 要するに大和はクリスマスを一緒に過ごしたいのだが、俺は嫌だ。

 去年、初めてのクリスマスを大和達の家族と過ごした。楽しかったと言えば楽しかったのだが、大和がいつも以上にハイテンションで面倒だった。

 優大の父親も少し面倒な性格なので、今年は死んでも行きたくない。

「まぁ、大和。別にいいだろ。クリスマス以外の日なら今日も遊べるって言うんだから。」

 俺に向かって吠えている大和を優大が諫め、話が終わる。

 こういう話題がいろんなところで聞こえるのも、クリスマスが嫌いな要因だ。

 キリスト教の行事に熱をあげている人たちの心が理解できない俺には、この雰囲気自体が辛い。


「平宮さん、今月の休みは決まってますか。」

 それに比べると慶人の口からその手の話題が出ることはない。

 この半年、なんとなく慶人のことを知った限りでは、俺と同じか、それ以上に世間の行事に疎い。

 クリスマスも知らない可能性が大きい。

 俺としてはそれが楽だ。

「あぁ、大学の休みと重ねると完全な休みは正月休みの期間だけだな。」

 夕飯後、今日配布された12月後半のシフト表を2人で確認する。

 シフトと学校の予定を照らし合わせて1ヶ月間の家事分担を考えるのだ。

「僕も似た感じですね。正月休み中の予定はまだ立ってないのでまた今度で、それ以外はいつも通りですね。」

 時々俺が朝食を担当したり慶人が夕食を担当するが、それは稀だ。

 基本的には互いのシフトを確認するという作業だけで終わる。

「慶人もまだ予定ないのか。」

 盆休みの時もなんだかんだと毎日俺らと過ごしていたが、今回はどうなるのだろうか。

「はい。どうせすることもないので勉強します。」

 言っていて寂しくないのかと思うような台詞を口にしているが、俺も高校の頃はこんなだった気がする。

「そうか。」

 他に用事もなく、少し気まずい気持ちでリビングを出る。

 慶人が正月休みをどう過ごそうと、俺には関係のないことだ。


「ただいま。」

 そう声を掛けて家に入るが、慶人がいないことは分かっている。

 今日は慶人が日中バイトで、俺はいつも通り夕方からだ。

 いつものようにご飯の支度を始める。

「はぁ、また慶人出しっぱなしだな。」

 できた料理を並べるためにリビングに入るが、食卓の上を慶人のノートが占領している。

 独り暮しだった頃の影響か、慶人は教材を机に置いたままで出掛けることが多い。

 リビングの隅に参考書などが並んだ棚があり、そちらは綺麗に整理されているのだが机の上はどちらかというと散れている。手の届く範囲に必要なものを置いておきたいタイプなのだろうか。

 これでは料理を並べることが出来ない。

「はぁ、仕方がない。」

 ルール違反になるからあまりしたくないが、広げられた教材を片付ける。

「ってか、なんの勉強してんだ慶人。」

 少しの好奇心が俺を唆す。

 普段慶人はパソコンを使っていることが多い。大学の勉強はもちろん、自分の好きなことを調べるときもどちらかというとデジタルで管理している印象がある。実際、紙のノートを見たのは初めてだ。

 そう振り返ってみると、好奇心は更に膨らむ。

 閉じようとしたら見えただけ、これは不可抗力。

 そう自分に言い訳をしながらノートを覗く。

「・・・」

 勉強をしていた訳ではなかったようだ。その内容はほとんど落書きのようなもので、数式が書かれているわけでも、専門用語が書かれているわけでもなかった。

 そのままノートは閉じて棚に仕舞い、料理を並べる。1時間後に慶人は帰ってくる。冷めているだろうが、温めて食べるだろう。ラップをして電気を消し、俺もバイトに向かう。

 慶人と工場ですれ違うときに、少しだけ罪悪感で胸が痛んだ。

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