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すれ違いだらけの俺の運命  作者: 甘衣 一語
友情とその他
23/40

同棲

 大学終わり、優大の家の送迎車に乗り家に帰る。いつも電車に揺られている道が車ではあっという間だ。

 既に荷物は全部箱に詰めてある。それらを車に乗せ、家電は優大のツテで借りてきたトラックに乗せる。当分使わないものは優大達の家が預かってくれるらしい。

「これで最後か。」

 優大の確認の声に返事をして家の鍵を閉める。隣の家のポストに鍵を入れる。ここは大家の家だ。事前に指示されていたため、これで鍵の返却も終わりこの家との関係もなくなった。

 5年も住んだ家なのになんとも呆気ない。

「結構、少ないな。」

 優大、大和、俺、運転手そして段ボールが5つ乗った車はどんどん家から離れてゆく。


「平宮さん、こんにちは。とりあえず中に入ってください。」

 チャイムを鳴らすと直ぐに慶人が出てきた。

 外で井戸端会議をしていた近所のおばちゃん達から逃げるように部屋へ入る。

 俺の荷物を入れるためか、以前来たときより更に整理されている。

「響ちゃん。荷物はここに置いてていい?」

「あ、園崎さん。そこの机に置いていてください。」

 大和と優大は慶人に指示されたとおり荷物を運ぶと、直ぐに帰ってしまった。

 段ボールたった3つだけの大したこともない引っ越しはこうして終わってしまい、なんとも気まずい沈黙が広がる。

「あの、平宮さん。この食器ってしまって大丈夫ですか。」

 最初に動き出したのは慶人だった。段ボールを開けて食器を棚に片付けている。今回俺が持ってきたのはこ食器と服、あとは大学で使う教材だけだ。

 他のものは慶人の家で用意されている。

 元々使っていなかった棚が1つあり、そこにものをいれる。俺の部屋は浴室の隣、慶人はリビングに荷物がある。

 布団も慶人が用意してくれた。広い畳の部屋がリビングの隣にあり、そこに2人並んで寝ることになる。

「他はないですか。」

 段ボールの中のものを全て出し終えた慶人が部屋に顔を出す。

「あぁ、これで終わり。」

 こちらもちょうど作業を終え、2人で1度机に座る。11月が目前の今、慶人の家には少し早いがこたつが置かれている。さすがにまだ電源を入れるまではしないが、普通の机よりも暖かい。

「・・・」

「・・・」

 改めて考えると、返事をするべきではなかった気がする。

 家賃とか食費とかそういった話し合いはまだしていないが、どちらにしろ慶人の方が負担が大きいのは明らかだ。棚や布団も用意してもらって、なんでこんな提案を慶人がしたのか不思議で仕方がない。

 それになにより・・・。

「あの、平宮さん。」

「どうした。」

 ここは慶人の家で、俺が居候だというのに慶人の方が緊張している。

「バイト、今日も7時半でしたよね。もうお風呂入りますか。」

 何を緊張しているのかしどろもどろ喋っている。たしかに、もう5時。風呂と夕飯とであっという間にバイトの時間になる。いくら距離が近くなったからといって、ギリギリに出てもよいと言うことではない。

「そうだな。風呂は俺がするから、夕食お願いできるか。」

 それぞれ分担して作業を始める。台風の日にも1度来てものの場所はある程度知っている。

 洗剤を取り出して浴槽を洗い、お湯を溜める。

 タイマーが鳴ったら俺から先に使わせてもらう。1人だと躊躇してしまう浴槽も、2人なら心置きなく使える。

「平宮さん、出来ました。」

 本を読んで待っていると机の上に夕食が並び始める。相変わらず和食だ。

「いただきます。」

 慶人が座ったことを確認して手を合わせる。

 いつもは1人で食べる食事が今日からは向かいに人がいる。新鮮だ。

「ごちそうさまでした。」

 慶人は食事の時喋らない。黙ってひたすら、美味しそうに噛みしめるように食事をしている。

「片付けは俺がするから、風呂入って来いよ。」

 まだバイトには少し時間がある。この食器の量であればそれまでに終わるはずだ。

 水の音を聞きながら、台所に向かう。

「あぁ、こりゃひどいな。」

 今日来てから始めて台所に足を踏み入れたが、かなり物が散らかっている。

 原因は明らかだ。調理器具は預けたが、調味料を優大に渡すわけにもいかず全て持ってきたからだ。元々慶人のよく分からないスパイスやハーブなどで一杯だった棚は、俺の分までは受け付けなかったようだ。使えばなくなるが、それまでの間は場所に困るだろう。

 床に置かれている調味料を少し動かし、食器を洗う。茶碗に平皿、コップ。俺たちが食事するために十分な皿はあるが、どれも柄が揃っていない。それぞれ持ち寄ったから当然だが、なんだか少し残念だ。

「あれ、平宮さん、そろそろ時間ですよ。」

 風呂からあがってきた慶人が時計を見ている。予想より時間が掛かってしまった。

「まずい、行ってきます。」

 カバンを掴んで慌てて家を出る。

「行ってらっしゃい。」

 そんなこと考えている場合ではないけれど、見送ってくれる誰かがいることが少し嬉しかった。

 これからなんとか頑張ろう。

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