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すれ違いだらけの俺の運命  作者: 甘衣 一語
非日常
20/40

慶人

 バレーで醜態を晒した次の日。

 昼休憩の時間に校内放送で体育祭の結果が流れる。この校内放送が使われるのは避難訓練の時と、体育祭の時だけだ。

 そんな特別なイベントである校内放送を生徒全員耳を傾けており、普段は賑やかなカフェテリアも今日は静かだ。

 各スポーツの1・2位を発表し、その後に優勝した団体を発表する。1位には5点、2位には3点が与えられてその総合点で競うのだが、生徒達が気にしているのは何よりも大会の優勝特典だ。

 結果が報告され、最後にそれが伝えられる。学科優勝者は図書館の貸出可能期間を1ヶ月に延長、学年優勝者はカフェテリアの3食無料券だ。


「あぁ、ダメだった。」

 ママに大会の結果を一通り伝え終えた大和がぐったりと机に倒れ込む。よほど学年1位になれなかったことが悔しいようだ。

「でも学科では優勝したんでしょう?あなたが頑張ったお陰じゃない。」

 そう言ってママが慰めようとするが、逆効果だ。

「そうだけど、だけど僕図書館行かないから、カフェテリアがよかった。」

 さっきからこの調子だ。なんで学科優勝は図書館なんだと文句ばかり言っている。俺はよく本を借りるからこの特典は嬉しい。優大もそれなりに本を読むが、大和はそもそも図書館に入ったことがあるのだろうか。

「くよくよしてても仕方ないだろう。いつか俺が奢ってやるから。」

 そんな大和に優大が折れる。

「いいの、ありがとう優大。」

 と一気に大和は上機嫌になる。後で優大は後悔することになるだろうが、俺は知らん。

 大和は普段お兄さんの作った弁当を食べているので、カフェテリアの料理を食べたことがないのだ。いつも俺や優大が食べている料理を羨ましそうに眺めながらチビチビと弁当を食べている。バイトをしていない大和の懐事情は悲しいもので、月5000円のお小遣いからカフェの食事代を捻出しているのだ。

 いくら大学までの交通費などは親が出してくれると言っても、大食漢の大和には苦しいものがあるようでことあるごとに優大が奢っている。

「それより響ちゃんは文化祭行くの?」

 明らかに顔を引きつらせている優大を尻目にママが俺に話しかけてくる。

 文化祭、とはなんのことだ。

 俺らの大学には文化祭がない。なら誰の文化祭か。

「あら、知らないの?ケイちゃんの文化祭が来週あるのよ。」

「え、そうなの。」

 一番最初に反応したのは大和だった。ママに詰め寄って詳細を聞き出そうと試みるが、私は行けないのよね、などと言ってあまり重大な事実を伝えた自覚が見受けられない。

「いつ、いつあるの。」

「えっと、確か水曜日と木曜日だったかしら。あそこにほら、チラシ貼ってるでしょう。」

 ママは相変わらずマイペースに後ろを指さす。

 確かに慶人の通っている大学のチラシだ。最近は忙しくてここにも来られなかったから知らなかった。

「平日か。大学遠いなぁ。」

 大和は行きたいようだが、俺は、あんまり。

 俺が言ってもなんで、って感じだろう。わざわざ大学が終わった後に急いで行って何をするんだ。

 何のために来たんですか、ってきっと慶人に聞かれる。

「ねぇ、響ちゃん。」

 そんな俺の気持ちは無視して大和は俺のスケジュール帳をカバンから取り出している。水はともかく木曜は2コマ目までしか抗議を入れていない。行こうと思えば行けるのだが、大和にそう言われても行く気にはなれない。

「あぁ、そうだな。」

 そこで文化祭の話は終わってしまった。話はまた体育祭のことに戻っているが、そこに混ざる元気もなく適当に相づちを打ちながら時計を見る。

 今日もバイトだ。

 慶人とは最近平日にシフトが多い。夕方にシフトが入っていたのは準備があるからだろうか。

 そんな風に気付けば慶人のことを考えていた。

 こんな風に誰かのことを考えることは今までなかった。親元から離れて意図的にそうしていた部分もあるし、その必要もなかった。それなのに何かあれば慶人のことが頭に浮かぶ。その変化がよいことか、悪いことか、自分では判断できない。だが、そういった変化にイライラしてしまう。

 その心境の変化が、兄との、アルファとの関係の変化も意味しているような気がしてなぜか分からないが不愉快に気分になってしまう。

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