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すれ違いだらけの俺の運命  作者: 甘衣 一語
トラウマ
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ストーカー

 この世界には男女の他に第二の性がある。発情期があり、男女共に妊娠が可能なω(オメガ)。身体能力や知能が優れたエリート階級のα(アルファ)。人口の9割を占めるβ(べーた)。

オメガの発情期は数ヶ月に一度、数日続き、アルファを惑わすフェロモンを体にまとう。発情期中にアルファがオメガの項を噛むと運命の番となり、番以外へのフェロモンの効果は無くなる。さらに、オメガは番以外に対して拒絶反応を示すようになる。番契約は一度しかできず、解約はできないため事故で番になることがないように、オメガの中には項を保護するチョーカーを着けている者もいる。

 そんな、生まれながらの運命が定められている。

「平宮さん。すいませんけど1時間待って貰えませんか。そしたら事情を説明できるほどの情報が集ると思うので。」

 動揺してまとまった言葉を発せずにいた慶人は、しばらくしてそう言った。それだけ言って電話は切れてしまった。それ以降はいくら電話を掛けてもつながらない。仕方なくそのことを工場長に伝えて彼女と3人、工場長室で待機する。

「なんで、なんであいつなのよ。」

「本当だったら今頃響と番になれてたはずなのに。」

 その間に少しでも状況を理解しようと彼女に質問しても、返ってくるの小さな声。やっと聞き取れた言葉も要領を得ず、意味はなかった。なぜ、休みなはずの彼女が工場にいたのか。慶人はオメガではなかったのか。今、慶人はなにをしているのか。疑問ばかりが浮かんで時間が長く感じる。

 工場長と2人で頭を抱えながら時間をやり過ごし、ちょうど1時間後に扉が開いた。

 慶人は少し疲れた表情をしているが、そこにもう迷いは見えない。

「遅くなってすいません。」

 そう言ってさっと部屋を見回して俺の隣に座った。

「いや、それより早く事情を説明してくれ。詳細を知らないと動けなくて困っているんだ。」

 やっと来た慶人に工場長は嬉しそうに話しかけている。この1時間、一緒にいたからどれだけ困っていたかは理解しているが、そう急かしても結果は変わらない。

「分かりました。」

 慶人はそんな工場長の態度にも慌てず静かに話し出す。俺が更衣室に入る前の時間にしたら10分にも満たない出来事は、あまり聞いていて気分のよいものではなかった。だが、その話以上に慶人の表情が俺を苦しめる。そんな目にあったのに、慶人はそれを当然のことのように話している。嫌だとも感じていないような、そんな表情が俺を不安にさせた。俺はてっきり慶人が逃げたのはオメガのフェロモンから逃げるためだと思っていたけれど、他に理由があるのだろうか。

「今日のことはこれだけですけど、他にも確認したいことがあって。もう少しここで話しても大丈夫ですか。」

 メモを取りながら話を聞いていた工場長からの返事を受け、慶人は机の上に自分のスマホを置く。

「これは古寺さんの高校の頃の写真なんですけど、平宮さん心当たりありますか。」

 工場長の後に俺もそれをのぞき込む。確かに写真の背景は俺の高校だが、こんな写真を撮った心当たりはない。

「それと、ここに映っている人の母親と電話したときの録音なんですけど、」

 慶人は音声を流す。そこから流れる声に彼女は嫌悪感を示しているように見えるが、相変わらずその発言は要領を得ない。

「この人は今居場所が分からないらしくて。古寺さんは知らないですか。」

 その問いかけがほとんど応えだ。写真に写る生徒は彼女と似ている。俺の後輩だったらしいその生徒について慶人はさらに詳しく話し始める。

 俺のストーカーをしていたこと、オメガであること、最近この周辺で目撃情報があること。俺の知らない情報ばかりが溢れて整理に時間が掛かったが、言いたいことは伝わった。工場長も理解したようで、警察に連絡している。

 こういう事件を関係ないと聞き流さず真剣に捉えてくれる部分を尊敬している。

 しばらくして来た警察に事情を説明する役目まで請け負ってくれた。今日は疲れただろうからと、仕事がまだにも関わらず俺は帰ることになり、予想以上に短い事情聴取を終え帰路についた。

 まだ、慶人についての疑問は解消できていないけれど、本人が話したがらないなら俺が聞くべきではないだろう。そんなことを考えながら気付けば眠ってしまっていた。

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