日常
「おい、大和。なんで慶人もいるんだ。」
旅行の翌日、約束していた駅の前。そこにある1台の車の中、当然のように慶人が乗っていた。大和はサプライズ大成功とばかりに喜んでいるが、優大も慶人も困り顔だ。
どうやら優大が慶人のMINEを教えてしまったようで、優大が珍しく所在なさげにしている。慶人も大和の迷惑メールを無視しきれなかったようで、ここまで来たらしい。
「本当にごめん、ケイ。今度なんか奢るから。」
「いえ、全然大丈夫なので。」
「優大。早く出して、今日は歌いまくるぞー。」
他は全員葬式の時のような静かさだが、大和だけはムダに元気だ。そのテンションのままカラオケに入り、大和は3時間歌い続ける。
いつもなら数曲歌う優大も、今日は大和の勢いに飲まれひたすらジュースを飲んでいる。
「ケイ君、またデュエットしようよ。」
「いえ、もう大丈夫です。」
大和にせがまれて一度だけ歌った慶人は、強い意志でそれ以降の誘いは断るようになった。そんな慶人の反応も行き介さず、大和は歌い続ける。
「ねぇ、響ちゃんいいでしょ。あと1時間、いや2時間だけだから。」
「大和。3時間だけの約束だろ。後は俺が聞いてやるから響たちは帰らせろ。」
約束の3時間を迎えそれでも歌い足りないとごねる大和、それを必死になだめながら優大が俺たちを帰してくれる。
「本当に帰ってよかったんですか。」
慶人は少し後ろ髪を引かれる様子だが、あの2人だけ残るのはいつものことだ。寧ろ俺がいたら邪魔だろう。元々あの2人はずっと一緒だったんだ、その間にぱっとでの2年くらいしか付き合いのない俺が入っていることが不思議だ。
「さて、このあとどうするか。慶人は予定あるのか。」
一応尋ねてみるが、急な誘いに乗ってくる時点で予定がないことはわかりきっている。とはいえこれ以上慶人を拘束するのは気が引けてしまい、結局駅まで一緒に向かいそこで別れる。俺もそのまま一駅乗って家に帰った。
結局その後も、盆休みが明けるまで俺と慶人は大和に振り回された。折角の休みなのだから、2人だけで楽しめばいいのに、なぜわざわざ慶人と俺まで誘うのか謎だが、慶人も十分に楽しめてはいるようで暇にしているよりはよかったのだろうか。




