帰宅
「本当にごめん。」
俺は大和に謝りながら急いで荷物を片付ける。優大のこれ見よがしの溜息が後ろから聞こえてくる。
分かっていたはずなのに、なぜいつもこうなのだろうか。
今日、10時にチェックアウトをする予定だった。そして今は9時35分だ。
「いいからほら早く。」
目を覚ましたとき、視界に映ったのは髪を振り乱しながら叫ぶ大和だった。今も俺を急かす大和は珍しく疲れた様子だ。
大和達と出掛けるときはいつもこうだ。朝に弱いのはいつものことが、学校やバイトの日以外の今日みたいな旅行ではアラームを掛けても寝坊する。
さらに寝起きが悪いせいで、大和達を蹴ったり叩いたりすることもあるらしい。自分ではそのことを覚えていないのだが、幸い慶人には手を出さなかったようだ。
「僕は大丈夫なので、慌てて忘れ物とかしないでくださいよ。」
こんな俺を見て慶人も呆れているだろう。それでも気遣ってくれているその優しさを気にしている時間もない。
「ケイ、響。このまま直接帰って大丈夫か?」
なんとか5分で荷物をまとめ、慌ただしくホテルを後にする。他にすることもなく真っ直ぐへと向かう。
「じゃぁね。」
いつもの駅で慶人を見送り、俺も自宅に帰る。
車の窓から手を振る大和に返事をして扉を開ける。高校の時から住んでいる見慣れた自宅だ。
この4日間、いつもと違う、慶人のいる旅行で溜まった緊張が一気に抜ける。
楽しかった。慶人と過ごすことも苦手ではないけれど、大和達とも親しくなるまで2年掛かった俺には荷が重すぎた。変に思われていなかっただろうか、などと心配なことは多々あるが考えても仕方がない。
明日も大和の要望でカラオケに行くことになっている。盆休み中は大和に振り回されるだろうから、今日くらいはゆっくり疲れを癒やそう。




