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幽霊告発  作者: 辻田煙
第4章「憂う弟」

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第34話「告白」

 どうやらちょうど、と言っていいのか『幽霊告発』動画のことを話しているようだった。扉でくぐもっているが話し声が聞こえてくる。


「――美術部の先輩でびっくりしちゃったってだけだから」


「そうなのね。……実はね、二番目に投稿された女性――あの人、私と同じ会社なの」


「ええっ」


 悠は思わず笑ってしまいそうだった。同じ会社どころか殺した張本人のくせにいけしゃあしゃあとよく言える。


「もう大変だったわよ。動画が投稿されてから、毎日仕事と関係ない電話鳴りやまないし、社内で動画を投稿した犯人捜しは始まるし……」


「そうだったんですね……。私の所はそんなの無かったなー」


「学校だからねー。先生方は大変だったかもね」


 しかし、結はまさか目の前の人間が殺人犯だとは思っていない様だった。むしろ神崎に同情しているようだ。


 少しの間沈黙が降りる。コップに飲み物が注がれる音が聞こえた。


「――今度は第三弾が投稿されたようなのよね。二番目の動画があったからつい気になちゃって。それでつい見ちゃってたのよね。今日、投稿されたばかりみたい」


「また動画が出たんですか?」


 それにしても、神崎はなんでこんなに『幽霊告発』動画の話を続けているのだろう。第三弾の動画では神崎の容姿についても触れていることには気付いているはず。動画を見れば殺人犯だと勘付かれる可能性はある。なのに、なぜ?


「そうなの。今度も女性だったんだけど――一緒に見る? 私も途中までしか見てなくて」


「え? でも……」


 悠は混乱した。神崎の狙いがなんなのかまるで分からない。なにがしたいのだろう。


「――じゃあ、一緒に見る」


 人の移動する音が聞こえる。どれほど結と神崎は近くなっているのだろう。あまりに近いと結を庇うのが難しくなる。


 声が小さくなり、何を話しているのか分からなくなる。聞き取辛い。


 少しすると聞き覚えのある声が聞こえてきた。明石の声だ。まさか、『幽霊告発』の動画を見ているのだろうか。


 一体、なんのために。


 ぐるぐると頭の中で理由を考えるが、まったく思い付かない。こんなことをしても神崎が不利になるだけ、それしか分からない。


 しばらくの間、結と神崎は動画に見入っているようだった。話し声がしない。しかし、動画はそんなに長くない。数分もすると、動画の声がやんだ。


 代わりに神崎の声が聞こえてくる。


「殺人鬼って誰なのかしらね?」


「え、ええ。私も気になります」


「……変な物見せてごめんね。ケーキ食べよっか」


「あっ、いえ。ごめんなさい」


 また誰かが移動する音が聞こえてくる。悠はほっとした。二人が離れれば離れるだけ安心できる。


「結ちゃんは何がいい?」


「えっ。あっ、そうですね――」


「じゃあ、私はマカロンをいただくわね」


「はいっ。ここのショートケーキすごく美味しいんですよー」


「あら、マカロンはどう?」


「もちろんマカロンもです」


 二人はどうやらケーキを食べているようだった。家にケーキなんか無かったはずだから、神崎が持ち込んだものだろう。毒が入っていないか不安になる。しかし、芹沢たちが特に騒いでいないのだから問題はないはず。


「ねえ、結ちゃん。一つ聞いてもいい?」


「はい、なんでしょう?」


「――さっきの動画の瀬里奈ちゃん。殺したのが私だって言ったらどうする?」


「へ?」


「は?」


 結と同様に悠は間抜けな声を上げた。


 なにを自白しているんだ、神崎は。


 悠には神崎がなにをしたいのかまるで分からなかった。一体何のために?


 視線があちこちに移る。


「瀬里奈ちゃん、犯人像を話してたでしょ? あれ、私なのよね」


「あの、なんの冗談で――」


「冗談じゃないわよ?」


 悠が困惑している間にも、部屋の中で話が進む。


「私が殺したの、瀬里奈ちゃん。さあ、結ちゃんどうする?」


「な、何を言ってるんですかー。瀬里奈を殺しただなんて、そんな――」


「あら、無理矢理そうじゃないと自分を誤魔化しても無駄よ。私は実際に殺したもの。ねえ、人にナイフが突き刺さる瞬間の感触って知ってる。硬い皮膚を通り越すとね、ぐじゅぐじゅって中の内臓の感触が手にまで伝わってくるの――」


「やめてくださいっ!」


 結は悠同様に困惑しているようだった。怒ってさえいる。いや、怖がっているのか。しかし、ここで出て行くわけにもいかない。今出て行っても神崎にうやむやにされるだろうし、彼女に隙が生まれない。


 神崎は何も話さない。


「本当に言ってるんですか。瀬里奈を殺したって。それはつまり、動画の内容通りであれば、三人殺したってことになりますよ?」


「だから、そう言ってるじゃない? 三人を殺した時の詳細を話してあげましょうか?」


「結構です」


 話の行方がまったく分からない。どこに向かっているんだ。


「大体信じろというんですか? 悪趣味にもほどがありますよ」


「そう。信じてくれないの。なるほどね。……ねえ、なんで私がここにいると思う?」


 神崎の問いに悠はドキリとした。彼女が今日、ここに来た目的。そんなものは一つしかない。


「いい目。みんな恐怖を覚えると、目が開くのよね。結ちゃん、あなたの目とっても綺麗ね。真っ黒で何にも染まらない」


「――誰ですか、あなた」


 結の言葉に神崎の悪魔のような笑い声が上がる。人間の皮を被った化け物としか思えない笑い。


「なぁに言ってるの結ちゃん。私はあなたの大好きな雪よ。神崎雪。世間一般で言う殺人鬼ってやつね――今日の標的は、あ、な、た」


 外は豪雨な上に雷が鳴り始めているのが聞こえる。おかげで中の様子が不透明になってくる。


 だが、やけにはっきりと神崎の声は聞こえる。


「この家のことはちゃんと調べてるわよ。結ちゃんのご両親と、弟くんとの四人家族。ご両親は仕事で不在、弟くんは部屋にいるのよね。あとで一緒に並べてあげるわ」


 行くべくきか、行かないべきか。タイミングによっては失敗しかねない。悠は足踏みをしていた。


 大きな雷の音が鳴る。


「来ないでっ」


 悲鳴染みた結の声が聞こえた気がした。

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