だが断わる!・・・そう言えたらな~。
ボクが手を置いたと同時に凄まじい光が水晶から放たれボクを除く全員の視界を奪う。
しかし界渡りの副作用か何かで強化されたらしいボクの目は何が起こったのか見えてしまった。
光りの中では水晶の中に山火事のような炎が映ったかと思うと、
海を連想させる量の水が上から降ってきてその炎を消し、
海は突然盛り上がった大地に吸収され、大地は嵐に削られて、
嵐は雷で霧散していく。そして雷は何も黒い空間に消えていった。
つまりどういうことだ? 炎は火、海は水、大地は地、嵐は風、雷は空そして最後のは無か・・・
それはつまりボクは全ての属性を使えるてことか。
なるほど、だから存在しない白なのか。
全知全能だけでも反則なのに全属性か。まったく何をさせたいのか全く理解できない。
ココまでの力をよこしてただ異世界を楽しめなんて言わないだろう。
一度この世界の監視者に会ったら聞いてみないとな。
さて、ようやく光りが消えた。全員の視力が回復するのに時間はかからないだろう。
それに魔力量はボクが見ても判断できないからサングラスでも付けてもう一度見てもらうか?
まぁ、とにかくなんて説明すべきか。
「っ・・・いったい何が起きたのですか?」
皇女様が両手を目に当てながらそう呟くように聞いてくる。
「第二皇女様、ボクの属性がわかりました。」
ボクはこの際だから本当のことを言っておくことにした、
何かあって全知全能を見られたときに全属性だと認識させれば説明が簡単だからだ。
ちょうどいい、魔法についてとついでに魔族について知っておこう。
できれば人間の国に行きたいしね。ボクは全知を使った。
? おかしい、魔法で何ができるか知ることはできたが人間の国についての情報が無い。
もしかしてこの世界には人間は1人だけ、つまりボクしか居ないのか?
・・・・まぁ良いか。言葉さえ通じれば人間でもそうじゃなくても関係ない。
それよりもボクが想像してたよりも魔法とは複雑なモノのようだ。
もっと簡単に使えると思っていた。まぁ暫くは全能の力に頼るとしよう。
正直必要以上に全知全能は使いたくない。楽しみが減るからね。
さて、そろそろ皇女様や他の皆さんも回復してきたかな?
ボクはそう思って謁見の間を見渡す。レイル団長に睨まれていた。まぁ仕方ないか・・・
いきなりフラッシュじゃ、特にみんなが凝視したんだからね。
やっぱり白髪がどんな属性なのか気になるようだ。
「属性がわかったのですか? 教えてください、どんな属性ですか?」
やっぱり一番興味を持っているのはこの皇女様だろう。
「ボクの属性は便宜上|《全》とでも言っておきますよ。」
ボクは軽くおどける様に言った。さて、反応を見せてもらおうか?
「っ・・・全、つまり全ての属性が使えると?」
「えぇ、ボクの目がおかしくなければ。」
もう一度見せるとさっき考えたが魔法について調べたときに魔力量の見分け方はわかっている。
「とても信じられない話ですが、貴女がそう言うならそれで良いでしょう。」
良いのか? まぁ深く追求されるよりもありがたいけど・・・
「さて、次の質問です。貴女は何処から来て何が目的でこの国に?」
ふむ、何処から来たか。コレはもう答えは決まっているからいい。
何をしに来たか? 普通に観光と休養でかまわないか?
「ボクはジパング国から来ました。
この国に来た目的は観光と休養ですね。」
ボクはとにかくそう答えてみた。ジパングなんて国はこの世界に存在しない。
「ジパング? 失礼ならがら聞いたことが無い国ですね。」
よし、のってきた。
「それは仕方ありませんよ第二皇女様。ジパングを知るのはジパング出身の者だけです。
なにせジパングは初代国王の張った結界魔法で覆われています。
言わば隠れ里ならぬ隠れ国のようなものです。一つだけ明かせるのは島国ということですね。」
結界魔法はどの属性でも使える一般魔法の一つだ。
様々な用法があるがバリアのようなモノが一番近いだろう。
「そんな国があるのですか。ではジパングには貴女の様な白髪にの人も何人か?」
「残念ながらボクが知っている中ではボクだけです。」
ボクは苦笑を浮かべながら答える。ジパングとは日本のことだ。
結界うんぬんの話は大嘘だが他は間違っちゃいない。
白髪に染める人は居るけど、地毛で白髪はまず居ない。
「そうでしたか。では貴女の種族を教えてください。」
種族か・・・この世界には沢山の種族が暮している。
皇女様のような悪魔族、耳の尖ったエルフなど様々だ・・・
「ボクは・・・人間族です。」
それでも他の種族と偽らず、ボクはそう答えた。
人間が居ないなら誤解させてやれば良い。
コレも全知全能が見られたときの保険だ。
「ニンゲン族ですか? それはジパングのみに居る種族ですか?」
さっきから質問が多いな。自分で質問オッケーって言ったけどちょっとイライラしてきた。
「まぁそうですね。もっともボク以外に生きてる人間族は居ませんけど。」
ボクはそう答える。まぁ人間がボク以外に居ないのは本当だしね。
「それは申し訳ないことを聞いてしまいました。」
皇女様の顔が悲しそうに曇る。
「いえ、事実だから良いんです。第二皇女様が気にすることではありませんよ。」
まったく感情表現が豊かな皇女様だ。こんなのが皇族で大丈夫かこの国は?
「そうですか、そう言ってくださるとありがたいです。
それではコレを最後の質問にさせていただきます。」
「何でしょうか?」
やれやれ、やっと終わるか・・・
「私の近衛軍に入りこの国に力を貸してくださいませんか?」
「はい?」
近衛軍? あれだよな、君主の護衛とかする・・・
「突然で申し訳ありませんがグライガーを一掃できるほどの腕前、
今の私にはどうしても欲しいのです。」
今の・・・か、訳ありだな。さてどうする?監視者からが指示があるまでやることもないし・・・
後ろ盾と衣食住が保障されれば動きやすいか。
「条件付きなら了承します。」
ボクはあえてそう言った。訳ありの女子供を見捨てるほどボクは薄情じゃない。
条件さえ良ければある程度のことは付き合ってやる。
皇女じゃなくて皇子だったら切り捨てていたかもしれないけど。
まぁ、礼儀正しい人間は嫌いじゃない。 あ、人間じゃないか・・・
「条件?」
「えぇ、一つはボクが望めば何時でも辞めれるようにしてくれること。
二つ、ボクの行動を軍規なんかで縛らないこと。
この二つさえ守っていただければボクの力を貸しましょう。」
辞めれることと規則で縛らないこと。ようは監視者からの指令があったときの保険だ。
「その二つだけで良いのですか?」
皇女様が驚いている。もっと欲深く条件を出されると思っていたのだろうか?
「しいて言えば服装の自由ですね。」
ボクは冗談っぽくそう言った。
「くすっ、わかりました。ではお願いしますね旅人さん。」
こうしてボクと皇女様の契約が結ばれた。