さて、困った問題だ。
ボクは今、手足を拘束されて牢に閉じ込められている。
コレには三つの理由がある。
一つ目はボクの実力の片鱗を目撃されてしまったという事だ。
ギルドにも登録していない自称旅人であるボクが上位の魔物をバラしてしまった。
そんな所を目撃されれば危険人物扱いされてもしかたがない。
あれはこちらの世界では異常でしかないのだ。
二つ目はボクの髪の色の問題だ。
コレを話すにはまず魔力の説明からしよう。
魔力とは一般的に魔法を使うときに消費する生命エネルギーの一種のことである。
魔力の量が多いほど強力な魔法を使える。そして魔力には6つの属性が存在する。
自然界のエネルギーに酷似した魔法を使える火,水,風,空,地からなる五行属性。
肉体の治癒や強化、人体の未知の性能を引き出す魔法を使える無属性。
これがこの世界に存在する魔力属性である。
どんな魔力量でも一人につき一つの属性を持って生まれる。
そしてその魔力属性は目に見える形で他者も自身も知ることができる。
理屈はわかっていないが魔力属性は頭髪に影響を与えている。
火=赤 水=青 風=緑 空=黄 地=茶 無=黒
このように髪の色は6種類存在する。それがこの世界の常識だ。
そこで問題なのはボクの髪の色が白だということだ。
ここで存在しない白髪を持つボクが現れた事が何より問題視されている。
これは界渡りの影響で、こればかりは仕方のない問題だ。
三つ目はボクが名前を名乗らなかったことだ。
今のボクは前のボクとは違う世界の違う人間だ。
だから世界を捨てたボクに前の名前を名乗る資格は無い。
つまりボクは今、名前が無い不審者だ。
コレはボクの小さなプライドの問題だ。
とにかくボクは今、自分がこの国でどう扱われるかの判断を待っているところだ。
漫画の先入観で、帝国=悪なんてイメージがあるから内心ドキドキしている。
そういえばレイル団長は赤髪だったな、火属性か・・・
ボクが暢気なことを考えていると牢の扉が開かれてレイル団長が入って来た。
「こんにちは団長さん、ボクの処遇が決まったんですか?」
ボクはレイル団長を見ながらそう聞いた。
「・・・貴様にはコレからこの城の主に会ってもらう。」
そう言ってボクの足枷が外される。
「いいんですか? ボクのような不審者が。」
自分で自分を不審者呼ばわりするのは変な気分だが、まぁ仕方がない。
「それは貴様の気にすることではない。
万が一のことがあれば貴様を排除するだけの問題だ。」
なるほど、自分の力に絶対の自信を持っているのか。
「そうですね。で、主さんはどういった方ですか?」
とりあえず聞いてみた。答えは期待しない。
「知らずにこの町へやってきたのか?」
レイル団長が初めて見せる驚いた顔があった。
「えぇ、ボクはただ風の向くまま気の向くままに旅をしているだけですから。
その町にどんな領主が居るかは調べてないんですよ。」
まぁ、口からでまかせだが。こう言っておけば誤魔化せるだろう。
「そうか、まぁ教えてやろう。
この城の主はガルド帝国第二皇女レンシア=デモン=ガルド様だ。」
っ! いきなり皇女様? さて、困った問題だ。