勝ち残り戦①-もう少し粘れよ・・・
「あの魔法はなんだ?」
最後の勝ち残り戦の舞台に向かう道中にツバキ隊長がそう聞いてくる。
「それはどちらの魔法のことですか?」
ボクはとぼけるようにそう聞き返した。
「両方だ! あれは古代魔法だ、違うか?」
「ご名答です。先日覚えました。」
ボクはそう答える。嘘をついたって仕方ない。
「覚えただと? いや、お前ならありうるか・・・」
この人はボクを過大評価してるのではないだろうか?
「だが、解せないのはお前は詠唱せずに指を鳴らして魔法を使ったことだ。
あんな使い方をする者はエルフにすら存在しない。」
さすがエルフ、魔法に詳しいね。
「それは企業秘密ということにしておきます。
ボクの編み出した方法が広まれば大変ですからね。」
強大な力を最短の動作で使えるようになる。
こんな方法が広まれば戦争に使われることは間違いないだろう。
もっともそんな方法は存在しないけどね。
ボクは全能の力のアシストで魔法を使っている。
指パッチンなんてしなくても魔法は使えるけど、指パッチンはフェイクだ。
相手にボクが魔法を使うときに指パッチンをすると思い込ませれば相手を惑わせることができる。
指が鳴ったのに魔法が発動しないとか、鳴ってないのに魔法が発動するなどだ。
敵を騙すなら味方から・・・
だからボクは何も言わない、語らない。
「む、まぁ良いだろう。こんなところでお前を敵にまわしては元も子もないからな。」
「懸命なことです。」
ボクはそう薄く笑う。そこで会話を終えてツバキ隊長は前を見る。
「・・・いよいよ最後の戦いだ。」
そう彼女が呟くのをボクは黙って見ていた。
決勝の勝ち抜き戦、ボクの出番は驚くほど早くまわってきた。
もっともボクは驚いてはいなかった。
それだけ相手側との能力が違いすぎる。
相手は手加減したとは言っても古代魔法を防ぐような実力者。
ボクが武器を与えて底上げした程度の実力ではかなわない。
これがチーム戦ならあるいはチームプレーで実力差をうめられたかもしれない。
だけど個々の力では遠く及ばない。
まぁ、一人倒せただけでも良しとしよう。
そういうわけで、ボクは2人目と相対している。
計画通り、第二皇子に恐怖を植え付けられるか・・・
いや、やらなければボクの仕事は完遂できない。
だったら思うようにやるだけだ。
さぁ、ショーの始まりだ。