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騎士道か、うらやましいな~。


15人目を殺した時には既にボクは肩で息をしていた。


界移動の副作用で身体能力が強化されているといっても、


所詮ボクは運動不足の高校生だったんだ。


そんなボクが全能の力のバックアップがあったとしても、


彼の技術を完璧に再現できるはずもなく、ただただ体力を消耗しているように感じる。


でもここは彼のサーカスではなく、ボクのサーカスなんだ・・・


だったらボクの技を入れていかないといけないかな。


ボクは鋼糸とは異なった糸を作り出してボクが殺した数人の体に巻きつける。


まだこの糸には名前が無い、ボクのオリジナルの糸だ。


鋼糸と違って切断能力が無いが、頑丈で千切れ難く、視認しないく。


ようは人形を操る為の糸だ。仮に傀儡糸(くぐつし)と名づけよう。


死体を兵として操るまでにはまだ練習が必要だけど、


相手の足を止めるのに十分なインパクトを与えられる。


ボクはそう考えて傀儡糸を巻きつけた死体を立ち上がらせた。


「・・・っ」


残る5人が息を呑む音が聞こえると、ボクは鋼糸を出して4人の首に巻きつける。


スッ・・・ゴトッ・・・


あっけなく首のなくなった死体を放っておき、残った1人に歩み寄る。


「誰に雇われました?」


ボクはしゃがみ込んでいるその1人に聞く。


「くっ、誰が貴様のような化け物に話すものか!」


ボクに殺気を放ちながらそう怒鳴ってきた。


普段のボクなら慣れない殺気に怯えていたかもしれないけど、


今のボクは頭に血が上っているのでまったく気にならない。


「ボクが気がつかないと思いましたか? 貴方の言うところの化け物が・・・


さて、教えて下さい。第一皇子ですか?第二皇子ですか?それとも第一皇女でしょうか?」


ボクは笑みを浮かべながらそう聞く。この笑みは別に愉快だから笑っている訳ではない。


これは一種の心理戦のようなものだ。


相手が笑みを浮べれば何か奥の手があるのではと勝手に勘ぐってしまうのはしかたない。


「・・・くっ、私は第二皇子レクテス様の近衛騎士軍の者だ。」


その心理戦に敗れた男は散々悩んでから肩の力を抜いてそう答えた。


「そうですか、第二皇子が・・・


この事を我が主の前でもう一度話してもらえますか?」


ボクは予想通りの結果に満足している。だまし討ちは嫌いだ。


だけど暴れまわったあげく勘違いでしたという結果になるよりも安堵できた。


「レンシア様の前で? わかった、私も騎士の端くれ、真実を語ってから逝くとしよう。」


男はそう言って立ち上がる。


「有難うございます。」


ボクはそうお礼を言う、自分の見立て通りの人物であることにホッとした。


「かまわん。だが最後に貴殿の名を聞かせて欲しい。」


「ボクの名前を? いったい何故ですか?」


もっともな疑問だ、最後の望みくらい叶えてやろうと思ったら、


死の前に望むのがボクの名なんて・・・


「我々を全滅させた相手の名前くらい騎士なら知りたいと感じるものだ。」


なるほど騎士道とかいう奴ですか・・・


「ボクの名前はマヤ、マヤ=ウェイデッドです。」


「知恵ある白き人か。よし、覚えておこう。」


そう言う男をボクはレンの前に連れて行き全てを話させた。


その後の彼がどうなったかはあえて此処では書かないでおこう。


とにかく盗賊に関しての真実がわかって良かったとしよう。


それよりボクは驚いている。何にか? 自分の精神にだ・・・


ボクは人の死を見たことあるから殺人を咎めることはしない。


だけどボク自身が人を殺したのは初めてだ・・・あ、人じゃなかったっけ?


それでも人間とあまり変わらない外見だし、なにより言葉が通じる。


だから少なからずショックは受けると思ったんだけど・・・


まったく、彼女に振られた時はあれだけ悲しく喪失感を感じたのにね。

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