闇夜の襲撃
「マヤ=ウェイデッド、私に貴殿の技を教えて欲しい。」
向こうの世界では見ることができない満天の星空を見ていると、
ツバキ隊長が近づいてきてそう言った。
「ボクの技を? それは何故ですか?」
ボクは他人に教えを請われるような技を披露した覚えはない。
なのになんでこんなふうに隊長さんから頼まれているのか理解できない。
「試合の時、私は自分の力不足を知った。
そしてマヤ、貴殿の実力が我々の誰よりも上回っていることも知ることができた。
だからこうして頼む、最後に見せたあの移動法だけでも教えて欲しい。
このままでは私たちはレンの望みを叶えられない。」
なるほど、縮地を教えて欲しかったのか・・・
でも教えるなんてとてもじゃないけど無理だね。
「無理ですね、残念ながらあれを今から教えても試合までには間に合わないですよ。
あれは才能があれば数ヶ月、なければ数年の修行が必要ですからね。」
修行云々のあたりは嘘だけど、教えても間に合わないのは事実だ。
第一にボクにはあれを教えられる程の知識は無い。
「そうか、すまなかった。」
ツバキ隊長は残念そうに肩を落とす。
まったくあの姫にしてこの部下ありだな。自分の感情を抑えられないなんて。
よし、ここは修行を名目に教育をしてやろうか?
いや、ソコまでボクが面倒を見る必要は無いね。
「縮地・・・あの歩法は教えられませんけど、
代わりに短期間で身につけられる技を教えましょうか?」
ボクはそう隊長さんに聞いてみる。上手くいけば修行を名目にストレス発s・・・
いや、イジm・・・いや・・・まぁいいや。
「本当か!? その言葉に二言は無いだろうな?」
隊長さんのテンションが無駄に上がっている。
「大丈夫ですよ。せっかくなので他の方にも教えましょうか?」
ボクは苦笑しながらそう答える。どうせなら他の奴にも教えることになるだろう。
それに、こんな猪上司を持つと部下は苦労するからね。
せめて上司の暴走を止めるくらいの実力にしてあげたい。
そう思うボクはやっぱりお人よしなのかな?
「敵襲!」
突然ゼルクさんの大声が聞こえて来た。
周囲を意識すると、だいたい30人位の武器を持った男達に囲まれているのがわかった。
どうやら盗賊のようだ。まったく町と町の間で盗賊とバッタリなんて漫画かよ。
とりあえず白夜の試し撃ちにはうってつけかもしれない。
ボクは白夜の引き金に指をかけると盗賊たちに銃口を向けた。
「いい加減になれない馬車には疲れていたんだ、
コレぐらいのストレス発散は良いよね?」
ボクはそう言いながら引き金を引く。
ガンッ・・・ゴバッ・・・
引き金を引いた瞬間、銃口から何か出たと思ったと同時に10人の男達が空を舞った。
どうやら威力の調節が必要なようだ。一発でこの威力とは・・・
恐らく弾丸を形成するのに使った魔力が多過ぎたのだ。
まぁ3分の1は削れたから後は近衛軍とレイル団長に任せて・・・
そう思ったけど盗賊の方たちはボクに襲い掛かってくる。
どうやらさっきの攻撃がボクによるものだと知られたようだ。
これはボクの責任だし仕方ないね。
ボクは短剣を抜いて構える。接近戦になりそうだしね。
20対1か・・・厳しいけど所詮はゴロツキ諸君だ、ボクの敵じゃない。
・・・そう思っていた時期がボクにもありました。
おかしい、コレは明らかに統率のとれた動きだ。
コレは盗賊というよりも軍隊だ。
盗賊に扮した他の皇子,皇女の近衛騎士による妨害って考えるのが妥当か・・
ははっ、コレは傑作だ。国の王になろうって奴が闇討ちか?
上等だよ、だったらこっちにも考えがある。
ボクの思案が終わる。後は作業を終わらせるだけ。
「皆様、お越しいただき有難うございます。」
ボクは高らかに声を上げる。
「当サーカスをお楽しみになるのに御代は必要ございません。」
口元に笑みを浮かべて思い出す。
「命が続く限り、当サーカスをどうかご堪能下さい。」
幼い頃に見た彼の姿を・・・