初めまして
1話がとても短い作品です
俺は今日、ファンシーラットを買った。そう、飼い始めたのだ! 最近は仕事ばかりで、彼女も奥さんも居ない俺には寂しさを埋め、疲れを癒してくれるペットが欲しかったのである。
ちょうどこのケージに居るんだ、見てくれこのバカっぽそうな顔を。これがまた愛らしい。
この子は椛。メスのファンシーラットだ、これからこの子と生活すると思うと楽しみで仕方がない。
このままケージの中の椛を眺めるのも良いが、やはりペットとは触れ合いたい。ケージから出してあげよう。
ガチャ
「よーし、ここが我が家だ。よろしくな椛〜」
やっぱり警戒しているのかな。手を出しても逃げていく。これから沢山接して慣れさせるぞ〜。絶対仲良くなってやる。
ファンシーラットは群れで生活する生き物で、1匹だと寂しがると聞いたんだけど、そこは少し心配だな
「椛〜、おいで」
ケージの奥に行っちゃって、全然出てくる素振りがないな。新しい環境だと無理もないか。
あと、こいつムスッとしてないか? ファンシーラットってこんなに感情が顔に出るものなの?
「ふわ〜」
それにしても、ペットショップ行って、帰って、ケージの準備して。疲れたな、少しお昼寝しよう。
「椛おやすみ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私は椛••••••と名付けられたファンシーラット。
ファンシーラットは、普通群れで生活する生き物。それなのに••••••! 私1匹なんて。
喚いても仕方がない、この家に慣れるとこから始めないと、あの飼い主のことはあとで良い。
トコトコ
うーん。何も分からない。何か変なものが沢山あるだけで、今わかるのは私の目の前で飼い主が寝ている事だけ。
「ん、ん〜••••••」
まずい! 飼い主が起きる!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おはよう〜、あ! ケージから出てる」
目を覚まして2秒、椛がケージから出て我が家を冒険していたのである。すごく、すごく感動モノだ。
ただ、やっぱり俺が目を覚ました途端逃げていった。初対面だから仕方ないんだろうが、やはりここまで逃げられるのは少し悲しくなるものがある。
「ちょっと待って〜」
ここで俺がする行動はただ1つ。近寄ってみる! 関わってみないと、慣れたり信用されたりなんてしないからな。
トコトコ
あ、やっぱり逃げられた。え、嫌われるの早くない? まだ何もしてないよ。まだ!
「ほら、大丈夫だよ」
パシッ!
「いてっ」
まさか手を伸ばしたら叩かれるとは。ネズミパンチ恐るべし。攻撃されるほど警戒されてるのか。え? やっぱり嫌われてない? おかしいな、ペットショップの店員は人懐っこいって言ってたのにな。
慣れるまで大変そうだなあ。全く慣れる気配がない。寝てる間に冒険をしてたみたいだから環境は大丈夫そうだけど、俺に懐いてくれるか。気長に頑張ろう。