損する宝くじ
宝くじ……それは庶民なら誰もが手の届かない高額当選を夢見て手を伸ばすであろう領域、様々な形で販売されては一部の人しか一等を得られず今やネット販売のみの物すら存在している。
その宝くじに挑戦する者がまた一人現れる“定幸助”、人は彼を運に好かれ運に見放された漢と呼ぶ。
「ふ……、今日もまた当たらないクジを買いに長蛇の列が出来ているようだな」
「定さん、本当に買わないんですか? ジャンボ宝くじ」
「買う訳無いだろう、ミニですらキャッシュバックが少ないんだ。」
この子の名は“金森金華”どう見ても女の子に見えるが何を隠そう女の子だ、低身長で胸は大きく茶髪ポニーテールで宝くじが趣味らしい。
「ふーん、あたしはジャンボミニを三十枚買おっと♪」
「俺はロト7のみ買うかな」
宝くじを買い事務所に戻り機材を取り出し動画の撮影を始める。
「準備出来た?」
「ああ、最初に上げる動画は『このクジは買うな! 損する宝くじ!?』で投稿するつもりだ。」
「え、宝くじって買わない方が良いのが在るの!?」
「そうだな、ネット専売の【着せ替え◯ーちゃん】と【クイックワン】の二種類は買わない方が良い。」
「何で?」
「この話しは撮影中にするから、今は準備してくれ。」
「はーい。」
俺は撮影機材の準備を終えると録画を開始し先程の話しを金森に再び語りかける。
「えー、“着せ替え◯ーちゃん”の何が駄目なの? 可愛いのに。」
「見た目は可愛いかもしれんがえげつない集金クジでしか無いからな、今回のテーマは宝くじで損をしない方法だ。 ま、買わなければ良いと言われればそれまでだが始めて買う人や今まで買ってた人達にとっては有益な情報を提供するのが【宝くじマスター】ちゃんねるだ。」
「それは分かったけど、やらない理由は?」
「それじゃ、軽く着せ替え◯ーちゃんの解説をするぞ。 この宝くじはネット専売で一口百円で買えるクジだ、5種類の果物の中から4つ選んで絵柄が全て一致していれば一等の当たりなんだが……」
「なんか難しい顔してるよ? これそんなに問題?」
「大問題だ、ブドウ、ミカン、モモ、リンゴ、メロンの中から選んだとして2つ一致で百円、3つ一致で五百円。」
「で、でもさ一等は何万円でしょ? 一等さえ当てれば……」
「一万円だ、確率とパターンを計算して六百二十五分の一……つまりは3等ですら二十五分の一で二千五百円も損する宝くじとなっているんだよ。」
「ええ!? 本当だ!! じゃあ、クイックワンの方が良心的じゃない?」
「いや、クイックワンも集金目的の宝くじだな。」
「ま、まさかそんな事有り得る?」
「有り得るんだよ、俺は前に何回か百口購入したが9等まである三百円と二百円のクジを勝ったが7等の700円が2回あるかないかぐらいのショボい当選金しか当たらなかったぞ。」
肩を落としながら語ると金森は驚いた表情で頬を指で少し掻いている。
「じゃ、じゃあさネット専売じゃない方の宝くじを買う方が良さそうだね。 ミニロトとかロト6とかビンゴ5とか色々。」
「今、金森が上げた三種類の宝くじも買わない方が良いクジだな。」
「ええ!? そうなの!! なんで!?」
「それはだな、当選金の額を見れば解る。」
「額?」
「ネット専売の宝くじの時にも言ったが、最下等の金額が極端に少ないんだよ。 ビンゴ5は二百円、ミニロトとロト6に至っては千円しかない。」
「あれ? ロト7も最下等は千円ぐらいじゃなかった?」
「そうだな、だがロト7を省いている理由はある。 それはミニロト、ロト6と同じ様にボーナス数字が存在している事にある。」
「?」
「知らない人の為に教えておくがボーナス数字はミニロト、ロト6では最下等の邪魔をしてくる数字であり、2等が当たるのに必要な数字になる。」
「あっ!! ミニロトとロト6って確か最下等でも本数字三つ合ってないとハズレなんだよね?」
「そうだ、つまり三つ数字が一致していたとしても一つがボーナス数字だとハズレになるんだよ。」
「そうなんだ、ミニロトは31個の中から五つ選ばないとだしロト6なんて43個の中から六個も選んで当てないといけないんだよね?」
「しかも四つ一致していたとしても、たかが一万円程度だからな。 更にボーナス数字が邪魔して等数が一つ下がるんだ。」
「でも、それだとロト7も変わらないんじゃない?」
「いや、ロト7三つの本数字と一つのボーナス数字が一致していれば千円の当たりになるし他と違いボーナス数字が二つもある。 選べる数字も37個の中から7つあるから丁度良いんだ。」
「つまりはミニロト、ロト6をやるくらいならロト7を買った方が良いってこと?」
「そうなるな、数字選択式の宝くじは買うならナンバーズ3、ナンバーズ4、ロト7の三種類に絞るのがオススメだ。 因みにビンゴ5も2ライン揃ったところで七百円にしかならないし、1ラインばかりだから損する宝くじだな。」
「あたしも気をつけないと!」
「あ、ついでに言っておくと地域くじやジャンボ等の宝くじやスクラッチもやらない方が良い宝くじではあるな。」
「もう買っちゃったんだけど!? なんで早く言ってくれないのよ!!」
「まあ、運だけで勝負したい人にはオススメの宝くじだな。 俺は買わないが今回のテーマはどうだったかな? 宝くじを買わない事で欲しい物が買える様になればいいな。 次回は最も当てやすい宝くじ【ナンバーズミニ】をお送りするぞ! 今回はここまで、ご視聴ありがとうございました!」
「まったみってね〜♪ あれ? ナンバーズミニなんて宝くじあったかな?」
録画を止め編集した動画をアップロードし投稿すると再生数も少しずつ上がっていくのを見ながら次回のテーマに必要なネタと道具を早速用意しに行った。
「動画順調に伸びてるね、もしかして再生数1万とかになるかも!?」
「そんなわけあるか、伸びてもせいぜい百いくかいかないくらいだぞ? それに次の動画の準備しねえと間に合わなくなるからな?」
「はーい、楽しみだな〜。」