愛しい涙
最近おかしい…起きると汗がすごいこんなこと今までに無かった。
春花は汗で湿ったシーツをベッドから外した。
「えっ春花さん…まさか…オモ…」
いつの間にか現れたレオンは手を口に当てていた。
「違う!!断じて違うわ!」
「ですが…」
「いいわよ、私が洗うから」
春花は顔を赤くして部屋を出ようとするがピタリと止まる。
「洗う場所はどこ?」
「教えません!」
「何でよ」
「それは私が洗いますので。それに元から汗って分かってます」
にこりとするレオンに春花はシーツを少し乱暴に渡した。
しかし、それは次の日もその次の日続いた。
少し寝るのが怖い…でも原因は多分あの夢…
最近の春花は眠ると必ずあの夢を見ていた。
「きっと夢を見なければ汗はかかない…だったら」
春花は起きることにし、部屋の灯りでレオンが来ても面倒臭いため真っ暗な部屋で目を開けていたが、目を瞑ってもあまり変わらなかった。
何時間経ったのかな…流石に眠くなってきたわ
そんなことを考えていると部屋のドアが開く音がした。春花はこんな夜中にレオンが?と思い寝たふりをする。
ゆっくりとカーテンが開く音がすると足音は春香のベッドの横で止まる。
春花は確認する様に薄目で見る。そこには黒い影に金色に光る目。
何で妖怪がこの部屋にいるの……
真っ暗な部屋ではそれだけしか見えず、春花は再び寝たふりをし、歯を食いしばりながら叫びたい気持ちを抑える。早くいなくなれと願うが途端にベッドが軋む。春香の横に黒い影が寝転んだのだ。
春花は不思議と嫌な感情にはならず、そのまま寝たふりをすると啜り泣く声が微かに聞こえる。
「っ…うっ…こう…いち…ろぅ…さま…」
この子はコクコさんだ…なぜかそんな気がする。
春花は夢を思い出す。眠る光一郎のそばで泣く黒狐。肌に触れるその涙は愛に溢れた熱い涙だった。
熱い…でも……
春花の手はコクコの頭を撫でる様に抱きしめて春花は眠った。
「…い……おい…おい!起きろ」
目を覚ますと、春花の目の前にはハクが一緒に横になっていた。しかし寝ぼけて思考が追いつかず、春花はハクを抱き枕の様に抱きつきまた眠ろうと目を閉じる。
「コク……」
寝言で言ったその言葉にハクは驚き抵抗するのを止める。
「そんなこと…言うなよ」
ハクの反する気持ちとは反対に尻尾は正直に動く。
「嬉しいのか…コクコ」
ハクの金色の目の光は強くなる。するとハクは勢いよく春香の上にまたがり抱きつき顔をスリスリする。
「えっ何!?」
流石に目が覚めた春花が目にしたのは今にでも顔と顔がくっつきそうなほど近いハクの顔だ。
「ど、どいて…」
春花と目が合ったその時少し顔が離れるがハクは舌を出し春花の頬を舐めようとする。が、勢いよくハクがベッドから落ちる。
「全く。お二人で何しているんですか?」
助けたのはレオンだった。
「おや…ハクかと思いましたが、あなたはコクコさんですね」
レオンはコクコになったハクの目を手で隠す。すると金色に光る目は普通のハクの目に戻っていた。