金色の瞳の白狐
大きな耳は本で見たことがあった。
「きつね…」
「狐は狐でも妖狐。それよりも君は最近レオンが連れてきた子よね?」
春花は途端に目が点になる。なぜなら今まで男の様に話していた妖狐がだんだん女性の様に話したからだ。
最初は男性に見えた妖狐だが話し方が変わると女性にも見える。
「あなたは一体…」
「春花さん!!」
名前を呼んだのはレオンだった。駆け寄るレオンは座り込む春花を抱き寄せる。
「無事で良かった…」
かなり探していたのか息を切らすレオンは徐々に冷静さを取り戻した。
「で、なぜハクが春花さんといる」
「なぜって助けたからだ」
「それは…外で騒いでいた妖怪たちに関係は?」
「あるな」
レオンはハクの話を疑うことはない。一通りハクに聞くと春花に笑いかける。
「春花さん、どういうことですか?」
泳ぐ目はレオンの圧には勝てるはずもなく、正直に謝罪したのだった。
部屋に戻る春花はレオンと銀と共に戻るがレオンは騒いでいる妖怪達をどうにかすると言うと、ハクに春花を見るよう頼み部屋を出て行ってしまった。話すことがない春花は二人きりに気まずいが勇気を出し話しかけた。
「ハクさん」
「ハクでいい」
「は、ハクさっきは助けてくれてありがとう」
「ああ」
「…….…」
窓の外を見る銀の背を見つめる春花は背中より尻尾に目がいっていた。
さ…触りたい
ふわふわの尻尾の誘惑に負けないように話を続けた。
「ハクはレオンとは長いの?」
「ああ…あいつが作られる前から居るからな」
「へぇー………えっレオンって作られたの?」
驚きを隠せずにいる春花はハクに近づく。
「確か、レオンはビスクドールって言う西洋の人形だったが、光一郎によって妖怪の姿になった」
春花は驚いていた。聞いたことがある名前に。
「光一郎ってお爺様の名前…」
「そうか…春花は蘭子の娘か。だからか」
「何が?」
「いや、何でもない。ただ懐かしかっただけだ」
少し笑っているように見える背中。本能的に勝手に動いてしまう尻尾は嬉しそうに見えた。
その尻尾には春花の手が近づく。
「ひぃ!」
先程とはクールなハクの声は奇声をあげた。
春花はとうとう振る尻尾の誘惑に負け尻尾をもふもふしていた。
「すごい…ここまでふわふわもちもちな物触った事ないわ!お裁縫で再現出来ないかしら…あっでもこんなに艶やかな素材の糸は流石にないわ…」
「やめて触らないで!」
ハクは抱え込むように尻尾を守るが春花はその言葉である事を思い出す。
「ごめんもう触らないから…ねぇハクは何でたまに女性の様に話すの?」
その問いにハクは俯き黙ったままだ。
「話しづらいなら大丈夫…ごめんなさい」
「姉さん…俺には姉がいたんだ」
話が読めない春花はただ立ち尽くしハクの話を聞き続ける。
「コクコは…優しい姉だった。唯一無二の姉、そんな姉を俺は喰ったんだ」