キャンドル
煮え切らないルディは口を閉ざしたまま数分間。沈黙を破ったのはドアが開く音だった。
「エヴィ温かい飲み物持ってきたわ」
おぼんに可愛らしいマグカップを乗せ春花が顔を出すと後ろにはレオンもいた。
「ありがとうございます」
「ルディさんもどうぞ」
春花はルディにも渡すと香りに誘われ一口飲む。
「お兄ちゃん…」
ルディは涙を流していた。
「……あっああ…ごめんな…」
無自覚に流れる涙を慌てて拭うルディに春花は持っていたハンカチを渡す。
「ありがとうございます」
そんなやり取りを無言で見ていたレオンが口を開く。
「エヴィ…ルディはあなたが目を覚ます数分前に目を覚ましました…エリザの薬や血が消え春花さんの正常な血が体を急速に巡り負荷がかかり意識を失ったのでしょう」
「春花さんの血…」
エヴィは春花を見つめた。
「これを提案したのは春花さんです」
春花は辺りを見渡すとある建物が目に入る。
「蝋燭のお店かしら?」
春花とは違う方を見ていたハクはその声で振り向く。
「そうだな。だが春花の知っている蝋燭とは違うみたいだな。気になるなら行くぞ」
「あ、待って」
春花はハクを追いかける様に店へと近づくが、そこは小さな教会だった。開かれた門から見える屋内は薄暗いが暖かな光が見えていた。
門を通ると男女の像があるのに気づき春花はその像をじっと見ていた。すると背後からシスターが話しかけて来たが話が通じず何を言っているか春花にはわからないはずが春花は何となく理解していた。
それは像の男の背に羽が生えていたからだ。
春花はその羽に見覚えがあった。
「エヴィ……」
フラッシュバックする悲し気なエヴィに自信なく開く羽根。
「春花さん」
聞き慣れた声が春花を振り向かせる。レオンだ。
レオンはシスターと話すとシスターは教会の中へと入って行った。
「この像は昔、街のみんなで建てたそうです。昔この街では殺人が起きた後必ずと言っていいほど犯人が近くで亡くなっていた。そのおかげか次の事件は無く人々は安心して暮らせていました……ですがある日を境に平穏な日々は終わりを迎えた」
「…それがエヴィの話に繋がるのね」
「はい」
春花は教会の中に入ると息を呑んだ。女神像の後ろにあるステンドグラスにはコウモリが描かれ、その下には幾つもの蝋燭が灯り幻想的であたたかい光景。
「ここはエヴィのお父様とお母様を祀る場所だったのね」
見惚れる春花にシスターは蝋燭を渡すと春花は何の躊躇いもなく火を灯し手を合わせた。
「ねぇレオン…私やっぱり見て見ぬふりできないわ」
春花は迷いのない瞳でレオンを見つめる。こうなったらもう言うことを聞かないとレオンは直感で感じると観念した様に息を吐いた。
「……わかりました」
「ありがとう…でエヴィの場所って」
「それでしたら先ほどシスターから聞いてます…移動しながら話しましょう」
教会を出ると門で待っていたハクと合流し森へと向かった。




