悲しみと怒り
薄暗くボロボロな館を無我夢中で走るエヴィはある部屋へと入る。そこは母、アリシアの部屋だった。
「もう嫌…」
涙を流し床に座り込むが誰もエヴィを慰める者など居ない。
久しぶりに泣いた…きっと優しくされたから思い出してしまったんだ…
辺りはすっかり暗くなり月光が揺れるカーテンから光刺す。するとエヴィはおもむろに立ち上がると、アリシアが使っていた机の引き出しを開ける。その中には手紙が入っていた。
手紙はアリシアからでルディとエヴィが眠っていた箱の中に一緒に入っていたのを後からエヴィは見つけていたのだ。
手紙には父、ルークも知っていた事や、その為にルディとエヴィを見つかりにくい場所、隠し地下室で密閉できる箱の中に入れ酸素不足にし仮死状態で眠らせていた。エヴィ達はルークを受け継いでいた事もあり、窒息や餓死では死ぬ事無かった。
蓋を開ける事で空気が入り目を覚ましたのだ。
そして、母アリシアの思いは絶対に自分の両親の思い通りにさせないこと。それは、アリシアの両親が実験のためなら小さい子供であるルディとエヴィを何の躊躇いもなく実験の道具にし痛めつける事がわかっていたからだ。
最後には謝罪と愛の言葉が綴られていた。
そんなエヴィは母の字を見る事でいつでもあの頃を思い出し、いつかあの頃の兄に戻れると信じ耐えてきたが、今日はいつもと違った。
本当に帰りたいと思っているの?
春花に言われた事が頭にこだまするが思い出すのはエリザの首を貪る様に噛む兄の姿。
「春花……わかったわ…お兄ちゃんを取り戻したくて帰って来てたけど…もう限界」
ここに来て3日目になるが館は移動する気配は無い。たが、それは春花も同じだった。曇る顔を明るくすると春花はレオンの部屋を訪れた。
「ねぇ!レオン、今日は2回目の街に行こうよ!私、外国は初めてだから行きたいわ」
「本当に街だけですか?」
訝しげな顔をするレオンに春花はちょうど廊下を歩いていたハクの手を掴む。
「そんな顔をするならいいわ!私はハクと二人で行くから!」
「おい!春花、何だいきなり…」
「レオン何か!部屋の肥やしになればいいのよ!」
春花は訳のわからないハクの手を引っ張り館を出ていった。
その様子をハクが一緒だからとほっとく訳にはいかずレオンは溜息混じりに館を出たのだった。




