日記
「お母さん…」
エヴィは怖さからアリシアに抱きついた。
「大丈夫よ…少しこの箱の中で待っててほしいの」
アリシアはしゃがみ込みエヴィを撫でルディと目が合う。
「ルディ…エヴィをお願いね…」
「お母さん……わかった」
アリシアは涙ぐむルディも抱きしめると、二人は大きな箱へ入る。
「ルディ、エヴィこの石を持ってなさい。暗いところで光るから少し怖さも無くなるわ」
「きれい…」
「ふふ…大切に持っていてね」
アリシアは二人が寝っ転がると最後に頭を撫でた。
「愛してるわ」
二人が言い返すのを待たずに何かを入れ重い蓋を力いっぱい閉める。
「母を見たのはそれが最後でした」
ランプの炎が揺れる部屋で春花達はエヴィの次の言葉を待つ。
「私とお兄ちゃんが次に箱から出たのは50年後……それはエリザによってでした」
エヴィはエリザの話をすると決まって険しい顔をしていた。
冷たい空気が肌を滑る。エヴィはゆっくりと目を覚ました。それは隣に眠っていたルディも同じだ。
「……こ…こ……は…?」
視線の先は暗い石の天井だが、赤い光がゆらゆらと揺れ動くのが見える。
「……エヴィ…」
一緒に寝転がるルディが手を握るが、それと同時に足音が聞こえて来た。
「なーんにも無いわね……でも見つけられて良かった」
覗く女の目と二人の瞳が交わる。
「あら!起きてる。ならさっさとこんな所から出なさいよ」
二人を引っ張り出すと、女は座り込む二人を上から目線で満足そうに笑う。
「こんな所じゃ顔も見えないわ。上に行きましょう」
暗い階段から地上に出ると二人は荒れた部屋に言葉を無くす。窓ガラスは割れ、カーテンはボロボロ。本棚は倒されていたが、夜だったため二人は陽の光を見る事は無かった。
「私はエリザ。あなた達の母親の遠い親戚とでも言っておこうかしら」
ルディは何かを察したのかエヴィと繋ぐ手を握る。
「母さんの…」
「ふふ…その表情…あなたは賢そうね」
エリザは持っていた鞄から何かを取り出す。それを見たルディは目を丸くした。
「それは父さんの…」
エリザが持っていたのは良くルークの部屋の机で見た本だった。
「そう。これはあなた達の父親…コウモリの怪物の日記よ」
「…お父さんの?」
荒れ果てた部屋。そしてエリザが父の日記をなぜ持っているのか。エヴィは不安そうにルディを見る。
「私がこれを見つけたのはとある研究所のガラクタ置き場。この日記に書いてある事をあなた達のどちらかにしてもらう為に来たわ」
他人の日記を何の躊躇いもなくペラペラとめくりエリザは感情を込め読み上げる。
「今日からアリシアも私に合わせ夜に起きてくれる様になった。話をしてアリシアの微笑む顔を見ると私もつられて笑ってしまう。幸せとはこういう事なのか?ああ…アリシアを私の持つ特別な能力でこのまま一生老いを知らない体にし生かしておきたい……愛おしいアリシアずっと一緒にいたい」




