紳士淑女
はぐれないようにレオンは春花と腕を組む。誰がどう見ようと恋人同士だ。
きょろきょろと周りを見そうになるのを我慢して春花は淑女を演じた。
春花はこれでも、お作法や人によって言葉を使い分けるのが得意だっただけに凛としほんのり微笑み優雅に歩く姿は美しく低い背は誰もが気にならないほどだった。
「あのお店で休みましょうか」
「そうね」
近くにあるティールームへ入ると紅茶の香りが鼻をくすぐる。席に着き注文をすると、人には見えないハクが思わず話しかける。
「春花はいつまでそうしている気だ?」
「何がです?」
口調もいつもとは違い、席に座ってもなお微笑む。春花はずっと笑顔を崩さない。
「春花さん、そこまでしなくて大丈夫ですよ」
他人からは不自然には見えないが、春花を知るレオンは無理していないか心配していたが、レオンと目が合うと春花は糸が切れた様に疲れた顔に変わっていた。
「初めてのことだから緊張して張り切りすぎちゃったわ…」
「そうだったんですね。すごく良かったですが、無理は禁物です。いつもと違う環境なら尚更…」
話していると店員が紅茶とスコーンをテーブルに置く。紅茶を初めて見る春花は、赤茶色に美しいティーカップが良く合っていた。今まで見たお茶とはかなり違い飲むのを躊躇っていた。
「どうしました飲まないのですか?」
「初めて嗅ぐ香りで…良い匂いなんだけど」
「春花さん、知ってます?この紅茶も、春花さんが良く知るお茶も同じ茶葉なんです…面白くないですか?同じ茶葉でこんなにも見た目や匂い…味も違うんです」
レオンは一口飲むと笑顔を見せる。それは春花を安心させる行動でちゃんと伝わっていた。
「………うーん美味しい……?」
なんとも言えない春花の表情にレオンは苦笑いしていた。
「お口に合いませんでしたか?」
「ごめん…よくわからない…」
「はははは…ではスコーンをどうぞ」
レオンは春花にスコーンを差し出すがお皿に乗っていたスコーンが2つあったのがいつの間にか1つになっていた。
「ハク食べました?」
「ああ、なかなかに美味しかった」
「そうですか!」
レオンは1つしか無いスコーンを春花に渡そうとするが、店内でいきなり怒号と共にガシャーンとティーカップが割れる音が響き渡る。
店内にいる全員が振り向く。そこには美しい女性と隣には男の子が座っており、テーブルの下では破れたティーカップを拾おうとする女の子がいた。
「使えない子!連れてこなければ良かったわ!!」
「申し訳ありません」
春花達の位置からは床に座り謝る女の子の顔は見えないが、子供が謝っているにも関わらず許さないのを見るのは、良い気分しないのは確かだ。




