血と決意
蔵の中では光一郎の血を引く者の血を陣の中へと垂らす。その役は春花に託すしか他ない。
「春花さん…痛い思いをすることになります…もしそれが嫌なら藤光様に頼んでみても……」
「大丈夫よ。いつまでも伯父様を頼って甘えられないわ…」
そう言うと春花は壁に掛けてある鋭利な刃物を手に取り自分の左腕へと当てる。
これは自分への覚悟よ
歯を食いしばり息を吸っては吐く。動悸が早くなるのがわかる春花は覚悟を決めた。
「……っ」
刃物を持つ震える手は皮膚を裂き血液が溢れ出す。
ぽたぽたと垂れ落ちる春花の血は床へと血溜まりができ、春花はその場で崩れた。叫びそうになるのを我慢する。ここで叫んでしまったら藤光が来てしまうだろう。
「春花さん…」
その時、陣が発動し異界との道が開かれるが一瞬で見覚えのある部屋の中へ変わる。
ハクは急いで近くにあった布をレオンに渡し止血を始めた。
「…痛い……よ…」
押し当てる布が赤く染まり、何度も布を替えては圧迫し止血する。
苦戦はしたが無事に止血をし傷口を見るレオンは消毒をし包帯を手際良く巻く。
「ありがとうレオン…」
「いえ、春花さん私は少し用がありますのでゆっくり休んでいて下さいハク…少しの間春花さんを頼みます」
レオンは少し険しい顔しながらマオと部屋を出ていった。
安静にと寝かせられた春花は出血からかぼーっと振り返る。
「少しの間だったけど、いろいろあったな……」
瞼の裏に映る記憶は何だかんだで藤光ばかりだった。
「ねぇハク…」
「なんだ…」
「ふふ…何だかこうやって二人で話すの久しぶり……ハクは意識ってあったの?」
「…ああ」
「そっか」
少し悲しい様な表情をするハクに春花は何も聞かなかったのだった。
春花はいつの間にか眠ってしまったが、隣にはハクが眠る前の状態で座っていた。
「ごめん…私いつの間に眠って…」
春花が話しているといきなり地響きの様な音が鳴ると建物がガタガタと揺れ始めた。
「何!?」
春花は上半身を起こすとハクは窓の外を見る。
「………」
「どうしたの?」
「浮いている…」
ハクの言動がいまいちわからない春花はベッドから出ると外を見る。
「本当だ…」
ハクの言うとおりいつも見える景色とは異なり地面は遥かに下だ。窓から飛び降りたら絶対にあの世行きだ。
そうしているうちに春花達がいる建物は何かに吸い込まれ辺りは真っ暗だ。
ハクは急いでランプに火を付けると扉が開きレオン達が戻ってきた。
「レオン、これはどう言う事だ」
何も聞かされていないハクは少し怒り気味だ。
「春花さんもハクもいきなりですみません……」
頭を下げるレオンは説明を始めた。
医者を辞める事。もう今までいた場所には帰らない事を。
藤光に言われたからとは言わず自分の意志と話した。
「この力はマオ様のお力です」
「僕はただ居ても意味無いとこはさっさと出た方が良いだけ。だからどこでも行ける様に人と地の狭間をこじ開けたんだ……まぁ行き先は気まぐれだから、どこに行くかはわからないからねー!」
当たり前の様に話すとマオは手を振りそのまま帰ってしまった。




