父と息子
懐かしさに浸るマオは紅茶を飲むが藤光は違った。
「父との思い出が話せる君が羨ましいと思ってしまったよ」
父、光一郎との思い出がなかった。本当なら語り合いたい所だが言葉が思い浮かばず苦笑いをする。
「それでも聞けて良かった。ありがとう」
少し微笑む藤光にホッとするマオだったがそれも束の間、マオは何もない空間に話し始めた。
それはさっき藤光が見ようとして見えなかった空間、光一郎がいると言っていた場所だ。
「え?今更そんな事言っても……わかったよ…本当に君は…死んでも頑固だね」
少し溜息混じりにマオは藤光に視線を移す。
「えっと、光一郎の住んでた館がすっごく綺麗で何も無かったけど何で?」
「それは、まだ決まってないが売ろうか迷っているんだよ…住む人も居ないからね」
「そうなんだ……なら一度、光一郎の部屋を見て…あと、君の父は一日だって君を忘れた事はない。その証拠は無いけど、前に僕も聞かされたんだ。その時の光一郎表情ったら……だから!君が思っている以上に光一郎は君を思っていたんだよ」
少し話をした後マオは出て行き、一人になった藤光は少し晴れ晴れした気持ちになっていた。
横になり眠ろうとする春花だが、夕食の時に急に言われた明日の旅行のことでいっぱいになっていた。
伯父様はいつもいきなり…せめてどこ行くかは知りたいわ…
悩みに悩んだ春花はベッドに座り自問自答をしていた。
「今から行ったら迷惑に……いやいや、そうよ!今更そんな伯父様に気を使わなくてもいいわね…」
春花は婚姻ことを思い出すと遠慮なく部屋を出ていった。
伯父様はいつも勝手すぎよ…婚姻は論外だけど、旅行は私だって行くところとか決めたいわ!
迷わず藤光の部屋へと向かう春花は曲がり角を曲がると同時に身体が吹っ飛び尻餅をつく。
さする腰の痛みを堪え、目の前に立ち尽くす人物を見上げるとマオだった。だが春花はマオとは面識は無い。
お客様かな…綺麗な人……
春花は一瞬見惚れてしまい我に帰る。
「……あっすみません!私ったら…」
急いで立ち上がるとマオは泣きそうな顔をし助けを求め始めた。
「ここは迷路なのかな……部屋ありすぎるし…」
「……あっ…もしかして迷子になりましたか?」
コクコクと頷くマオは半泣きになっていた。
「私の名は春花と申します。伯父様……当主の藤光は使用人さんにも同じ屋敷で生活して家族の様に信頼し合える中にしたいそう…なので部屋は使用人さんの人数分だけ部屋があるんです……ふふっ実は最初私も迷ってました」」
安心させる様に春花は笑顔で話すとお客様用の部屋がある場所までマオを案内したのだった。
「着きました…ここまで来るとわかりますか?」
「ありがとう!助かったよ」
「いえいえ!では私はこれで…」
春花は一礼をし元来た廊下を歩き出す。
「良い子だな……春たん」
マオはその場から一瞬にして消え自分の部屋で眠るのだった。




