二人の思い出
この時代の日本人にはまだまだ洋室には慣れないであろうと客間は和室だった。
マオはレオンの心の声が聞こえなくなると廊下を歩き出す。真っ直ぐ迷わずに歩き着いたのは藤光の部屋だ。
ノックもなしにさも当然の様に部屋に入ると、待ってましたとばかりに藤光はソファに座っていた。
「待っていたよ。さぁ座ってくれ」
マオは藤光の前に座ると用意していた紅茶が目の前で注がれ置かれる。
「マオと言ったね…まさか君みたいなのが来るとは思わなかったよ」
「僕はただの付き添いなだけ。藤光を見たとき光一郎と瓜二つでびっくりした…だって僕の隣に光一郎がいるのにってね」
霊を見る事はできない藤光は何もない空間を見つめる。
「そうか…君は父と交流があったんだね。どうやって父に会ったか聞いてもいいかい?」
紅茶を飲み喉を潤すとマオは出会った時のことを話し始める。
「良いよ…確か、あの時は初秋だったかな……」
マオは用があり朝早くに光一郎の住む館の近くで何時間も何かを待っていた。その姿は人には見えないため怪しがる者はいない。
たとえマオが人前でわざと叫んでも誰一人として怒る者や不快に思う者は居なかった。
池を囲む大きな石に座り頬杖をつく。
「つまんないな〜朝になったちゃったから…帰ろうかな」
近くにある小石を池に投げ込み退屈しのぎをしていると、人の声が後ろから聞こえるが自分ではないマオは振り向かずに小石を投げ続ける。
「そんなに石を投げ入れて何をしてるんだい?」
真後ろから聞こえる声にマオは振り向き見上げると初めて人と目が合った。
「………だれ?」
男は当たり前の様にマオの隣に座り込む。
「ちょっと隣に座らないでよ」
「まぁまぁ良いじゃないか。私は光一郎って言うんだ君は?」
優しく微笑む光一郎はその場を温かくなる様な雰囲気にさせる。
「名乗るほどのものだけど、名乗らない」
「そうか…それは残念だ。私はこれでも西洋に行ったことがあるんだが、君の姿が西洋人の様に美しくてついつい声をかけてしまったんだ」
いつも一人だったマオは褒め慣れていない。そのせいか不思議な感覚だった。
「でも、声をかけて良かったよ。君の瞳は今まで見た中でも一番美しい。近くでないと見過ごすところだった」
金色に光るマオの瞳は光一郎を映す。
「ははは、邪魔してすまなかったね」
光一郎は立ち上がり背を向け歩き出すが、着物を引っ張られ立ち止まると引っ張っているマオを見る。
「どうしたんだい?」
「………マオ…」
「え?」
「だーかーらー!僕の名前はマオ」
突然の大きな声で目を丸くする光一郎だがすぐに微笑む。
「はは、そうかそうか!よろしくなマオ」
その後、マオは自分が人でない事を話すと光一郎は驚きながらも、どこか納得していたのだった。




