相対
藤光の部屋には、結界を張り終えた矢鷹もいた。
張り詰めた空気の中、使用人から西洋の人が二人、門の前にいる事を告げられる。
「奥の部屋へ通してくれ」
奥の部屋とは余程のことがない限り使われない窓の無い部屋だ。
何事もなく門をくぐる二人組の男達、そのうちの一人とカーテンの隙間から目が合う藤光は急いで逸らす。一瞬の出来事だったが藤光の額には脂汗をかいていた。
何だ…今の…一目で心の中を暴かれた様な…いや、違う…
青ざめる藤光は今にも吐きそうになりながらもにやりと笑う。
「矢鷹…行こう」
「あーれ…隠れちゃった。まぁいいや、それよりも…綺麗な家だね!花も美しい」
マイペースなマオは蹲み込み花を見ている。
「道草ばっかしていないで行きますよ!」
強まる呪いはレオンを急かせる。そのせいで強い口調になっていた。
「はいはい」
あからさまな態度に面白く無いマオはそっけなく返事をかえし館の中へと入る。
「こちらのお部屋でお待ちください」
奥の部屋へと通されると、一礼をし使用人は部屋から出て行く。
「この部屋…窓がありませんね」
「そうだね」
二人は中央にあるソファに腰掛け館の主人を待つこと数分、扉が開く。藤光と矢鷹だ。
「お待たせしてしまってすまない。いきなりだったもので準備に時間がかかってしまってね…で?何用ですか」
藤光はテーブルを挟みレオンとマオに向かい合うように腰掛ける。レオンはその風貌、声や仕草にひるむが動じず声を上げたのはマオだった。
「すっごい似てるんだね。最初見た時びっくりしちゃったよ…でも話し方は似てないね!ほら、しっかりしてレオン…この人はあの人じゃないよ?」
そうだ…よく見たらこの人は光一郎様では無い…騙されるな
レオンは深呼吸をし息を整える。
「単刀直入に伺います。こちらに女の子がいますよね?」
「はい。いますが…どうしてです?」
迎えに来ました…と言おうとするが、自分がおかしなことを言おうとしていることに気がつく。
ここは本家だが、桜井家だ…春花さんの居場所であり帰る場所…春花さんにとったら人と暮らす方が良い。異界で人が住むことは茨の道を歩くのと同じ…
春花の事を思うとレオンはそこから話せなくなってしまう。
沈黙が流れる部屋に痺れを切らしたのは藤光の後ろを立つ矢鷹だった。
「お話が無いようでしたら本日のところはお引き取り下さい」
そのまま矢鷹は扉を開け帰るように促すが誰一人席を立つ事はないがその中でマオはにんまりと笑顔だ。
「ああ〜君って…ねぇ…矢鷹、知ってる?君の両親は君を置いて行ったあと直ぐに死んだんだ。愛し合う二人は邪魔されない場所を探して…魅力的だよね〜」
笑顔のマオとは違い、見開く瞳に固まる身体。自分で思い出すより遥かに不快感が増し矢鷹は震え出す。
「な…んで…俺の…」
矢鷹は両親の死体が目の前にある、その場に居るかの様な感覚に陥り押さえていた扉が閉まる。
「矢鷹に何をした!」
「そんな怒らないで僕は事実を教えただけ。それに耐えられなかったのはあの子なだけだよ。ねぇ…藤光、君は勘が鋭いから…だから僕たちを神社の本堂へと通したんだよね?」




