想いの決別
「まさか…」
息をのむレオンは山を降り、建物の前まで近づく。
「久しぶりにここに来た…あの時は光一郎がいたから楽しかったけど、今の館はそうじゃ無いみたいだね」
「はい…人の気配がしません…」
レオン達は春花がここにいない事はわかっていたが、暗闇に溶け込む立派な館に人一人居ないのが引っかかっていた。
「人が居ないならちょうどいい…夜も遅い列車も無いから今日は館に入って夜を過ごそう」
男はそう言うと躊躇わず近くの窓を割り、中へ入る。
「あなた様は……いつの間に実体化していたのですね…」
「レオンだけ人に見られて僕だけ見えないのは不公平だから…ほら」
中に入った男は、レオンに館の中へと入るように促す。少し高い位置にある窓だったが、高身長のレオンは軽々と中へ入った。
「うわっ懐かしい…知ってる?こっちに光一郎の秘密の部屋があるんだ!」
すかっかり探検気分の男はあちこち歩いた後、二人で秘密の部屋へ入るが、ゆっくり懐かしむレオンの瞳からは涙が伝っていた。レオンの視線の先には写真立てに入った家族写真。
今でも思い出せる…私はこの館に来て数日の間この部屋で過ごしたんだ…
(やっぱり君は美しい人形だ。君と話をしてみたいな…あっそうだ!あの子に手伝ってもらおう。)
(光一郎なに?)
(やぁ、来てくれてすまないな。さっそくなんだが、見てくれないか)
(ふーん…呪いの魂を持つ人形か…で?どうすんの?)
(この子を人間のように話せて、背丈も本物の洋人のようにして欲しいんだ。君ならできるだろう?)
(光一郎…君は僕がどういう者かわかって言っているのかな?本当なら恐ろしさで怯えて欲しいくらいだよ…まぁやってあげるけどね…)
(マオ、君をそんな風には一度たりとも思った事ない……よし!じゃあお願いします……あっでもその前にみんなで記念撮影しに行こうか!)
あの日々が昨日のように蘇る…楽しかった…あの時の写真は現像の時間があるからと、結局見る事は無かった……でもこれで良かったんです…見てしまったら昔が恋しくなってしまう……光一郎様…私は今でもあなたをお慕いしてます。ですが、それも終わりにします……。
レオンの瞳には涙は無いが少し悲しそうに笑い何も無かったように秘密の部屋を一人後にした。
「………はぁーあ…どっもじゃダメなのかな…ねぇ光一郎…えっ?ん?わかった…一応聞いてみるよ」
レオンは食堂の椅子に座っていた。
埃などは無いが、棚には鍋や調理器具、食器などはなく、大きな棚や椅子とテーブルがあるだけだったがレオンはそれを気に止めることはなく、ただ時間が過ぎるのを待っていた。




