隠し事
春花を見つめるスイゲツは静かに立ち尽くしており、藤光の膝には狐の妖怪が丸くなり一緒に眠っていた。
「藤光様、着きました起きてください」
「ん…ああ久しぶりにいっぱい眠ったな…あっ春ちゃんいつの間に起きてたんだね」
そのまま春花と話そうとする藤光を止め、列車を降り駅舎を出ると事前に電話にて知らせていた迎えの車、二台が既に待っていた。
「藤光様、お帰りなさいませ。お持ち物をお持ち致します」
「ああ、よろしく」
運転手は矢鷹から荷物を受け取り丁寧にもう一台の車に乗せた。
狭くなるからと藤光は春花と乗り荷物を乗せた車に矢鷹が乗り込み、本家桜井邸へと発進させた。
「春ちゃん…さっきから元気ないけどどうしたの?」
心配そうに藤光は春花に話しかけるが俯くままだ。
すると藤光の膝にいた狐が戯れるように肩に乗り藤光の頬を舐める。
「うわっやめてくれ……コクコ」
藤光のその言葉で春花は振り向くが藤光が変な動きをしているようにしか見えない。
「伯父様…今、コクコと言いましたか?」
「ああ…館から出る時に僕の肩に乗ってきたんだ黒い狐の妖怪なんて珍しいから一緒に連れてきちゃったんだ」
楽しそうに話す藤光を見つめる春花は肩に乗り戯れる狐が見えたがそれは想像でしかない。
「そうそう、コクコと教えてくれたのはあの白い天狗なんだ」
「スイゲツが…」
「最初は敵意剥き出しだったが話をしたら大人しくなった…春ちゃんは話がわかる良い妖怪に出会ったんだね」
良い妖怪……最初から見えていた伯父様は妖怪で苦労しているんだわ…なら私が妖怪のいる異界で暮らしていると知られたらきっと……全力で止める…
「伯父様は…もしも妖怪の世界があるとしたら行きたいですか?」
見えなくなってしまった春花は藤光を仲介にスイゲツとコンタクトを取ろうとしていたが、その前に藤光が妖怪をどう思っているのかを何処となく聞いてみることにしたのだ。
「妖怪の世界か……嫌だね…ねぇ春ちゃん僕は君が思っているほど、立派でもないし優しくもない。間違いをした者には罰だって与える…妖怪には特に…ね」
いつもの笑顔を春花に向ける藤光だが、春花には狂気に感じ、同時に心に誓ったのだった。
絶対に伯父様に知られてはダメだ…
そうこうしていると車は既に桜井家の敷地内に入っていたが数年振りに来た時とは外観がかなり違い庭から建物、全て洋風に変わっていた。
車から出るとその光景に釘付けになってしまう程、春花は目を輝かせていた。
「綺麗…すごいです…」
「春ちゃんはこの家になってから初めてなんだね。二人が亡くなってすぐに変えたんだ…蘭子にも見てほしかったな…」
二人とは清次郎とフミの事だ。
そういえばお母さんはお祖父様の西洋の話を楽しみにしていたって言ってたな…
春花は昔の事を思い出していると藤光が目の前に立ち春花の手を取る。
「春ちゃん改めてようこそ…今日から一緒に住む家だよ」
「………は?」




