絶望
レオンは最後の妖怪の手当てをし診療所の扉を閉める。
「今日は遅くなってしまいましたね」
レオンは最近現れた木霊を診に行って欲しいとアマビエに言われ通常診療を遅らせていた。
「春花さんはもう夢の中ですね…土産話は明日聞きましょうか」
扉に休診の札を出すとカーテンを閉め灯りを消した。
完全に月が満ちる頃、春花達に残された時間はわずかだ。
春花は二階の窓からハクとスイゲツを見かけ、静まる館内を抜き足差し足と進んでいた。
二人とも何で建物の裏にいるの…しかもあの先は
誰も近寄らない物置蔵だ。春花は思い出しそうになる頭を振り階段を降りた。幸い玄関には誰もいない。ドアを開け外へ出ると灯りもない暗闇を歩く。
本当は人間界に後ろ髪引かれそうになるが、自分を待っているレオンの事を思い出すともう自分の居場所はここでは無いと思うことができた。
もしかしたらレオンの呪いがそう思わせているかもしれないわね…
急ぐ足はハクとスイゲツを見つけ真っ直ぐ向かう。
「二人ともやっといた…」
「ハル…ハクの跡をつけていたんだ」
スイゲツはハクの事を春花に話す。そんなハクは物置蔵の扉に両手を着き耳を傾けていた。中の音を聴くように。
「ハク」
春花は普段しないハクの行動に不思議に思い顔を見ると異変に気づく。
「コクコ…」
金色に光る瞳。これはコクコの証でもある。
「スイゲツ、いつからハクはこんな感じなの?」
「ここに来てからだ」
春花は以前あった事をスイゲツに話す。
「金色の瞳が消えない限りハクは戻って来ない…ここはお祖父様の思い出があり過ぎるわ…」
「わかったハル、俺の背に掴まれ。」
察する春花は言う通りにし、スイゲツはハクを両手で掴み急上昇する。
「ハル、このまま…」
帰るぞと言おうとしたスイゲツは突然苦しみだす。
「スイゲツどうしたの?」
徐々に落ちていき仕舞いには飛び立つ前に着地した。
背から降り春花はスイゲツを心配していると物影からある人が出てくる。
「あなたは…確か矢鷹さん」
「………」
月明かりに照らされる中、矢鷹はじっとこちらを見てぶつぶつと何かを唱えていた。
春花は矢鷹に近づくが春花には見向きもしない。見ている方向はスイゲツだ。そこまでくると流石の春花も矢鷹の目的に気づく。
「やめて!やめなさい!!」
必死に矢鷹の視線反らせようと押したりするが春花には倒すような力は無いが、それを苦しみながらも見ていたスイゲツは、勢いよく水弾を矢鷹目掛けて数発放つ。適当に打ったその一つが顔に命中すると、矢鷹は勢いよく水を吸い込んでしまい咳をしていた。呪縛から逃れたスイゲツは自由を取り戻したのだ。
「スイゲツ!」
喜び春花が振り返るとスイゲツの隣には藤光が立っていた。




