偽りの再会
驚きのあまり大きな声を出す貞三郎の後ろにいた礼子は、急いで春花の元へ行った。
「春花!あなた今までどこに行っていたの?あの時、裏にある蔵に行って来るって言ったきり姿が無くなったから……私ずっと心配していたのよ…」
礼子は春花の両手を握り泣き崩れ継母の明子は礼子の背中をさする。
「春花さん…何があったか知りませんが…あなたの家はここです。また前みたいに一緒に暮らしましょう」
優しく微笑む明子と涙を流す礼子。
え…なに……この人たち
両手を視線を落とし固まる春花を隣で見ている藤光は話を切り出す。
「感動の再会のところすみません。本題を話しても良いかな?」
藤光の声でハッとしたのは貞三郎だ。
「す…すみません藤光様。明子、礼子。椅子に座りなさい」
二人が座るのを見届けると藤光は先ほどとは違い切り替え口を開いた。
「さて本題だが、最近の君の仕事を話に来たんだ。心当たりはあるだろう」
「何でしょう…?」
「わからないのか」
一人、呆れかえる藤光は目の前のテーブルに紙を並べた。
「この資料はここ1年間の君に任せている会社の成績、それと最近の君の行動だ」
蘭子が亡くなってからは貞三郎が会社の経営を任されていたが、1年半前のある日から急激に伸びており、不自然だった。もう一つの資料は事細かく貞三郎の行動が1年間記載されている。
「突如として子会社が親会社より儲けるとはどういうことか知りたくてね。貞三郎」
黙る貞三郎は脂汗をかいていた。
「まぁその答えは君の行動記録で証明されているが…なぜ敵会社にうちの情報を売って莫大な金を受け取ったんだ?」
「そ…そんなことしてません!」
無言な藤光はあるものを出す。それは貴重な写真だ。写真には貞三郎と矢鷹、他には敵会社らしき者が写っていた。
見覚えのある貞三郎は声を荒げ始めた。
「こんな紙切れじゃあ私の行動を証明されませんよ。第一、この紙には話していた内容らしきものまで書かれているではないか!」
焦りを隠せず貞三郎はあろうことか親会社の頂点に立つ藤光に怒鳴り始めた。
「私の周りには有能な部下がいるんだ!経営が悪くなっているのを私のせいにしないで欲しいね!!それに、君の会社がどうなろうと知った事では無い!」
内密の事も敵会社に先を越され続けていた為、親会社は経営不振に陥っていたのだ。
頭に血が上りいつの間にか立っていた貞三郎は藤光を見下ろしていた。
「良く知っているね。言いたい事はそれだけか?貞三郎」
ゆったりと冷たい声の藤光に貞三郎は我に帰るが、それは遅く皆、貞三郎を見ていた。貞三郎は藤光より3歳年上だが、立場では藤光の方が上だ。
「………」
「さて、貞三郎行動記録を作った人に来てもらおうか。入って来てくれ。矢鷹」
一同はドアへ注目すると静かに開き矢鷹が部屋に入って来た。




