嘘と真実の過去
「春ちゃんは僕のこと、どこまで知ってる?」
少し考え込む春花は小さい頃に本家について教えられたことを思い出す。
「…祖父の弟、清次郎様とフミ様との間に生まれた奇跡の子…ですよね?確か、フミ様がなかなか授からない中できた奇跡の男児だったとか」
藤光は自分がそんな風に言われている事は知らず目を丸くしていた。
「えっそれ誰から聞いた?」
「祖母です。私がまだ5歳の頃だったと思います」
藤光はどこか浮かない表情をする。
「そ、そっか…ごめん話の続きお願い」
「わかりました。3年前清次郎様が事故死してから1年後フミ様は病で亡くなり、後継者に息子のおじさんが受け継いだって聞きました…私はそれ以上は知りません」
「やっぱり…そう言い伝えられているんだね」
一息吐く藤光は過去を見つめる様に話す。
僕が5歳の頃だった。いつもと変わらない朝は突然の言伝で崩れ去った。言伝の内容は今すぐ本家の屋敷へ来る事だった。
両親と僕は急いで本家へ行き、通された部屋には当主の祖父、清次郎とフミがいた。話は簡単に言うと、僕を本家の子として育てると言う事だった。温厚な父は今まで祖父に楯突いた事など無かったが怒り狂いもう反対した。母は泣き崩れ話など出来なかった。
そこまで聞くと春花は真実を悟る。
「そう、清次郎とフミの間に子供は授からなかった。本家に後継者がいないと世間に知られない為、息子は静養で田舎に5年間行っていた事にしたんだ。大事にしないように知らせなかった。と、表向きはそうなったんだ」
藤光と春花は互いに見つめた。時が止まったかのようにな静寂に包まれる。
「僕は光一郎と奈津の息子。蘭子の兄なんだ」
「そう…だったんですね」
「ちなみに、長男の光一郎が本家の人間になれなかったのは、一人で誰かと話したり遊んだりして不気味だからそうだ」
小さい頃から妖怪が見えていた光一郎は性格もあるが人目を気にしていなかったのだ。
「まぁ本人も本家にいるより自由で良かったみたいだけど」
「おじ様が見える事はお祖父様は知っていたのですか?」
「知っていたよ。五歳までだけど…祖父は僕を清次郎の子にしないのなら、路頭に迷うだろう。そう言い始めた。父は身体が弱い母と息子の僕、どちらかを選ぶ事になったが、選べなかったんだ」
春花は流れる微風を感じながら穏やかな口調の藤光に耳を傾ける。
「そんな二人を見ていたら、どんな事があっても僕の父と母は二人だけ…そう思った僕は清次郎の息子として本家に行ったんだ」
「五歳の子の決断にしては重すぎます」
「あははだよね…でもだから今があるんだ」
話をしていると、いつの間にか日が傾き始めていた。
「さてと…今から貞三郎と話があるから一緒に春ちゃんの家に行こうか」




