見える眼
転んだ拍子に地面で擦れた腕には傷。着物で隠れている膝は痛みがあり顔を顰める。数秒寝転び起き上がる。
痛いけど…まだ気づかれてない……絶対に見つかるわけには…
春花は髪で顔を隠し、気づかれない様に小声でスイゲツを呼ぶ。
「ごめん…立てそうに無いから手をかして」
頷くスイゲツは春花をお姫様抱っこする。
「この方が早い」
羽を広げ、ハクを置いて羽ばたき飛び去ろうとする。何かあった時の最終手段の逃げ方だった。
「………」
しかし、スイゲツは飛ぶ体制のまま固まる様に動かない。
「どうしたの?」
「………」
話そうにも口も動かず立ち尽くす。その背後から藤光の声が聞こえてくる。
「天狗さん。やっと本物見れたんだ…逃げないでほしいな」
藤光は声高々にスイゲツの白い羽を見ている。
「それにしても…こんな美しく凄い天狗を使役している君は一体…何者なんだ?」
スイゲツの腕の中で俯き目を瞑る春花の髪を藤光はかき上げた。
「………え」
髪をそっと元に戻し、スイゲツから春花を下ろす。
「えーと…春ちゃん?」
覚悟を決めた春花は顔を上げ藤光を見る。
「…お久しぶりです」
「うん、久しぶり…って違う!どういうことだ?」
「話せば長くなるのですが…それよりも、おじ様はなぜ本家から遠いこの地に?」
うーんと考える藤光様はスイゲツやハクを順に見ると最後に春花を見た。
「まぁ、僕も聞きたい事がたくさんあるから…そこの公園、人気の無い場所で話そうか」
そう言う藤光はスイゲツに貼ったお札をベリっと剥がす。
公園に入りベンチに座る春花と藤光。スイゲツとハクは春花の意向で遠くに見える位置で待っていた。
「久しぶり春ちゃん。蘭子さんの葬儀以来だね」
「お久しぶりです…あの…何故おじ様は本家から遠いこの街にいるのですか」
「それは春ちゃんに会いに来たからだ。贈り物を買う為にこの街に寄った…だけど、あの白い天狗を見かけてから次の店に行くふりして探してたんだ。お陰で付き人はヘロヘロだっ」
楽しそうに話す藤光とは違い神妙な面持ちな春花は気になっていることを包み隠さず聞く。
「おじ様は妖怪が見えるのですか?」
「見える。小さい頃からね」
「そうだったんですね」
そうか…お祖父様がそうだったようにおじ様もそうなんだ
レオンやハクから聞いた見えていた光一郎を思い出していたると、藤光は人差し指を立て口を開く。
「僕はもう結婚するつもりも無いし、血の繋がりがあるのは春ちゃんだけだから…蘭子も知らない桜井家の秘密を教えるよ」
今や桜井家では頂点にいる藤光はゆっくりと自分のことを話し始めた。




