春と波と
体勢を整え店内を見るが誰もいないが、商品も無く会計をする台には一つのベルが置かれていた。
それしか無い春花はベルを鳴らす。
すると、店の奥から女が現れた。
「いらっしゃい!あれ?見ない顔だねどうしたの?道に迷ったの?」
陽気な女は春花に問いかける。
「………石鹸…ください」
「ん?ごめん!もう一回言って」
「…石鹸ください」
次はちゃんと聞こえた女は春花を見る。
「石鹸って高価だからあげることはできないんだよ。お金を払ってくれたら別だけど」
春花は持っていたレオンが作った手提げ袋に手を入れがまぐち財布を手に取る。
「いくらですか?」
「あっえっと3個入りで40銭だよ」
「それを10個ください」
目が飛び出そうになる女は慌てて石鹸を持ってくる。
「こんなに買って大丈夫かい?」
コクリと頷く春花は場の空気に慣れ口が開く。
「私はお使いで来てるからお金の事は大丈夫よ」
「そうなんだ!すごいねお嬢さん名前聞いてもいい?」
春花が声を出そうとすると背後からした声で咄嗟に被り物を深く被り俯く。
「波江さん!こんにちは」
春花は一瞬にして固まる。聞いたことのある声がしたからだ。
この声…もしかして…
春花は顔が見えない様に俯き会話を聞く。
「久しぶりじゃないか!いつこっちに来たんだい?」
「さっき。来たばっかりさ。なんか珍しいものでも無いか寄ってみたんだ」
「藤光さん。どういうのがいい?宝石?衣服?それとも呪物系?あっごめんね!先にお嬢さんの商品を渡すね」
波江は石鹸を包み春花の前に差し出す。
「どうぞ!石鹸重いから落とさない様にね」
「へぇ高価な石鹸をこんなに…あっそうだ!波江さん天狗なんて使役したの?」
「えっ?何の話?本の話とか?」
春花は包みを取り一礼をし早歩きで店を出る。
「波江さん、用ができたからまた」
藤光は店を出ると付き人を置いて行き走る春花を追いかける。
「ハル、あいつどうする?追いかけて来るぞ俺の水で気絶させるか?」
「ダ……メ」
久しぶりに走る春花は完全に運動不足ですぐに息が上がっていた。
何で本家の藤光おじ様がいるの…
「君!待ってくれ」
どんどん追いつかれる春花の足は既にもつれ始めていた。
「ハル!追いつかれるぞ!」
わかってる…けど足がもう…
走りが歩きに変わる。すると、追いつかれそうになる春花と藤光の間にハクが立つ。
「狐…いや妖狐だな」
「逃げろ!!」
背を向けたままの春花にハクは声を上げ再び走り出す。が、限界を迎えている春花の足は力が抜け何も無いところで勢いよく躓き転ぶ。仕舞いにはその拍子に被り物は地面に落ちた。




