星の輪
2話です。よろしくお願いします。
蔵の中は暗く埃っぽい。窓は鉄格子で出れない。
今までも食事抜きもあった。平手打ちも気に入らないことがあったら数回叩かれた。それでもいつも自分の部屋に帰れていた。
「私が何をしたっていうの…」
閉じられ扉に左手を当てても何も起きるはずもなく力が抜け次第に涙が溢れる。
すると右手から何かが落ちた。しゃがみ込み手探りで落ちたものを探しだす。
「あっこれ」
母の形見の髪飾りの花だった。
「無意識に持ってきたのね」
両手で花を握り締めると涙が止まらない。
「最初から罠だった…」
鉄格子の外は山で館の離れにある物置蔵は泣き叫んでも誰にも聞こえない。
こんなに泣いたのは母が亡くなったとき以来だ。
何時間泣いただろう…
鉄格子から外を見ると暗闇が広がっていた。夕食などは無くいつの間にか眠っていると朝になっていた。
鉄格子を見るとコップ一杯の水におにぎりが置いてあり無我夢中で食べる。
元々食べさせて貰えなかったのもあった為かおにぎり一個で空腹は満たされた。
冷静になり蔵の中を探ると訳の分からない円が描かれた紙が何枚もあり、お札や引き出しには数珠玉や勾玉、壁には奇妙な面や鋭い包丁やナタが飾ってある。
奥にはコケシや人形、木彫りの動物もあるがその中でもひときわ存在感を放っている大きな丸い鏡には星形が刻まれている。
「これは何?…」
一日蔵で過ごしたが誰も出しには来なかった。それでも一日一回食べ物を持ってきてくれていたが、いつからかニ日に一回になっていき、ニ日過ぎても食事が運ばれることは無かった。
次の日には身体に力が入らなく床に寝転びぼやける視界は天井を見ていた。
お腹すいた…喉乾いた…
頭が傾くと霞む目線には鋭い包丁だ。
喉…乾いた…
何を考えたのか引きずる身体は壁に向かい手を伸ばしたのは鋭い包丁。
腕を出すと皮膚に包丁を当てる。
痛みよりも血が出るとひと舐めする。微かにする鉄の味に我に変える。
私は…何をしているのだろう…もう…何も考えられない…
寝転がると止まらない血は腕を滴り落ち床には血溜まり。
春花は天井を虚な目で眺めている。
「ほ…し」
天井には大きな星が円の中に描かれていた。だが、春花にとってそんな事はどうでもよかった。
ああ…お母さん……お母さん…お母さん…
母の顔が思い浮かび目には出ない涙。大事に持っていた髪飾りの花は床に転がる。
「あれ?これ私が作った物ですね…懐かしいな」
え…声…
虚な目は声の主に向ける。
そこにはこの場所には似合わない金髪で洋装な男が立っていた。
ああ私…死ぬんだ…こんな私でも…神様が迎えに来てくれた…お母さん…
意識はそこで途切れた。
「やっと呼んでくれましたね」
読んで頂きありがとうございました!