静寂の村
「これならあっという間に着きそうです」
レオンとハクは朧車という牛車の妖怪に乗っていた。
-数時間前-
二人は黙々と歩いていたが最初に根を上げたのはハクだった。
「何されるかわからない以上、歩いて行くのは時間が無さすぎる」
止まるレオンは振り返るがいつもとは違い仏頂面だ。それはレオンに余裕がない証拠でもあった。
「では!どうすればいいです?私たちには翼も無ければ、車のように走り続けることもできません。こんな事で足を止めるなら歩きます」
「わかった。車があればいいんだな待ってろ」
そう言い残すとハクは白狐の姿になり、どこかへ行ってしまった。
数十分経つ頃、レオンは痺れを切らし歩こうとするがいきなり目の前に牛車が止まる。その中からはハクが出てきた。
「早く乗れ話はその後だ」
レオンが乗り込むと朧車は動き出す。その速さは速く歩くより断然都合がいい。
「ハク、この方は?」
「朧車だ。最近は全く会っていなかったが、昔良くコクコと乗せてもらっていたんだ。だから一か八かで昔いた場所に行ったらまだ居たんだよ」
猛スピードで走る割には朧車の中は居心地が良い。
「ありがとうございます。これならあっという間に着きそうです」
その言葉通り、乗ってから数時間経ったとき朧車はゆっくりと停車した。
高い山が聳え立つ麓。烏天狗の村に着いたのだ。
見つからないように遠くで降り村へと近づくが何かがおかしいことにレオンとハクは気がつく。
「静か過ぎるな…」
「この村…誰もいませんね」
村へ入り窓から覗くがどの家も留守だった。
村は坂になっており一番高い場所に大きな屋敷があり二人はそこに向かった。
「この大きな屋敷は当主の家…ですが」
「いないな」
ハクは閉まる門を押し中を確認していた。
「ハク…見つかったらどうするんです!」
「そんときは当主に招かれたって言えばいい…何か企んでいるなら、俺たちが来るのは想定されてるだろ」
誰もいない屋敷は施錠されておらず、二人は屋敷の中へ入った。
「そういえば春花にかけた呪いを辿ればわかるんじゃないか?」
「それが…この村に入ってから呪いの気配が追えないんです。咄嗟にかけた弱い呪いだったのでこの村を統治するスイゲツさんの力の方が勝っているんでしょう…それよりも」
「ああ…誘導されてたな」
屋敷に入り何故か迷う事なく歩き着いたのは、水の間と書かれた部屋だった。障子を引くがやはり誰もいない。二人が部屋へ入ると、中心にあるテーブルの上で立つはずのない一枚の紙が勝手に立つ。その目立つ紙には[屋敷裏の山道から頂を目指せ]誰が書いたかは言わずともわかっていた。




