呪い
「ゆきちゃんどうしたの」
「ここは私に任せて助けに行ってください」
「でも一人じゃあ…」
一人だけではとてもじゃ無いが捌き切れないだろう。
「あら!一人では無いわ」
雪女の後ろから現れたのはアマビエだった。
「ですが…」
「いいのです。それに頼まれてしまいました。あの方に」
数時間前。銀髪の男はアマビエの所にも寄っていた。
「アマちゃん、レオンを助けてあげてレオンはあの子の為に今まで生きてきたようなもの…それにレオンは君には頼む事はしないだろう。だから…ね」
「承知いたしました」
最初会った時はあんな笑顔出来ないくらい荒れてたあの方が…これも光一郎のお陰なのかしら?笑顔で言われたら断るものも断れないわ…まぁ断るつもりもありませんでしたが…
アマビエはずかずか病室に入りレオンが眠る布団を持つと思い切り引っ張り上げる。
「いつまでお眠りになるのかしら?行くなら早く行きなさい。そして、春花さんを無事に連れ帰りなさい」
「はい!行きますよハク」
「ああ」
二人は久しぶりに敷地外へと出る。乗り物や便利なものなど無いこの妖怪の世は、飛べるものは飛び、足が速いものは走るが、レオンとハクはそういう能力は無い。ハクはついて行くように右へ行くレオンの後ろを歩く。
「で。烏天狗の村ってどこにあるんだ?」
「それは大丈夫。春花さんにかけた呪いを辿れば行けます」
「いつの間に…どのくらいで着くんだ?」
「そうですね…丸一日歩き続ければ1日で着きます」
ハクは後ろを振り返る。館の門が見える。先が長い事が実感してため息をついた。
高い山々が聳え立つその麓。複数の和風の家々の中に一際目立つ和風の立派な門に囲むように建てられた大きな和の家。その中に春花はいた。
「ハルいよいよ明日が婚姻の儀。皆に君をお披露目する日だ」
春花は口角を上げ笑い頷く。白い翼に包まれスイゲツの膝に座り見つめ合う。
スイゲツの目に映る春花の目には光はない。
「当主様。集会の場が整いました」
襖の外から聞こえた声の主は音も無く消え去る。
「少し行ってくるよハル待ってて」
スイゲツはゆっくりと襖を開け誰もいない事を確認すると春花を残して襖を閉じた。
「スイゲツ様がお越しになりました」
その声を合図としたようにスイゲツは部屋へと入り一つ空いている自分の席に腰を下ろす。
「皆んな集まってくれてありがとう」
「スイゲツ本当に婚姻の儀まで花嫁を見せない気か?」
身を乗り出す1人の老人の烏天狗は少し怒っているようにも見える。その者は前当主、スイゲツの祖父、ザンゲツだ。
「見せる気は無いよ。お爺さんや父さんが何と言おうとね」
淡々と話すスイゲツは絶対の意志を感じさせる。
「それに、今の当主は俺だ。従って」
「………」
大勢いる部屋は静まり帰る。が沈黙を破ったのは先程と同じくザンゲツだった。
「お前を当主へしたのは吉だったのか今、自問自答している。あれさえ無ければ」
「そうだね。でもこの烏天狗の村が天地がひっくり返るほどのこと…神が俺を選んだ。だから今の村がある」
「そうだな…」
ザンゲツはそれ以上言葉を発することはなく一方的にスイゲツが話し、終えた。




