烏の群れ
外へ出ると遠くからでも見える複数いる天狗。その黒い翼は昼間掃除した羽とは違う。近づくに連れ天狗の大きさを実感する。
ちょうどレオンが対応する様に診療所から出てくる。
「お前がレオンか?」
「そうです。烏天狗様達が大勢でいらして…どの様なご用件でしょうか?」
「スイゲツ様が数日前にここで療養した際に代々受け継いだ羽根団扇をお忘れになったそう…ここにあるのはわかっている。今すぐ渡しなさい」
烏天狗はレオンを見下す様に鋭く睨むがレオンは気にしないで考え込む。
「本日、その部屋を清掃しましたがその様な物があったことは聞いておりません。何かの間違いでは無いですか?」
「貴様!何かの間違いだと!スイゲツ様を愚弄するつもりか!!」
烏天狗達はジリジリとレオンに詰め寄る。
「落ち着いてくださっ」
話途中だったレオンは一瞬にして宙を舞う。
それを皮切りにレオンより大きい烏天狗達は群がる。
何が…起こって…いるの……
目の前で起こっていることを受けいられずただ呆然と立ち尽くす春花は呼吸が乱れ始める。
心臓の鼓動が苦しい…
手で抑える様に心臓を抑えるその手にあるものが触れる。
これは…
春花の手に触れたのは母の形見…レオンが作ったラナンキュラスの銀細工だった。無くさない様にとネックレスにしていたのだ。
銀細工のはずの花びらは何故か一枚、一枚と散り始める。
「春花、変な気は起こすなよ」
ハクは一応忠告をするが、春花は走り出す。
「おい!」
一目散に走り向かうのは倒れているレオン。
「やめて!!」
声を張り上げレオンを守る様に烏天狗達の前に両手を広げ立ちはだかる。
「邪魔をするならお前もコイツの様にする」
烏天狗の一人が春花の何倍もある手を振り上げ思い切り振り下ろす。思い切り目を瞑る春花に痛みはない。恐る恐る瞼を開けると先程まで一緒に居たハクが倒れ込む。
「お前…は…バカか…」
意識はあるものの次は無い。そんなハクの目は左目が金色に光り、右目は銀色に光っていた。
「何で…」
涙が止まらない。視界がぼやける。
羽根団扇…きっとあれがそうだったんだわ…なら罰を受けるのは私。
深呼吸をし、うるさい鼓動を落ち着かせる。
「ごめんなさい。あなた達が探している羽根団扇は…」
春花は言いかけた。それは遠くから近づく美しい白い翼に目を奪われていたからだ。
「ダメだろう。お前たち」
春花の前に舞い降りた純白な翼は見覚えがある。
その羽は部屋にあった羽と同じだったのだ。
「初めまして小さな…人の子よ」




