狐の兄妹
期待したらダメ…裏切られたときが怖い。
「春花、今日から君の姉になる礼子ちゃんだ」
そう告げられた父の目は私を見ていなかった。
「春花ちゃん、いきなりだからまだ受け入れられないと思うけど仲良くしてね」
姉がいたらお母さんが居なくなってぽっかり空いた穴が埋められるんじゃないか。きっと毎日楽しくなる。そう期待していた。あの笑顔に。
最悪…嫌なことを思い出したわ…大丈夫。あの生首がいるとは限らない…
春花は傘の妖怪より、首だけしかない妖怪を恐れていた。
「大丈夫よ」
「ここの隠し扉を出ると外だ。何が出てきても騒ぐなよ」
「わかっているわ」
無意識に震える春花の手。ハクは壁に手を当てる。
「お前は今妖怪だ堂々としていろ」
開かれた隠し扉が閉まるとただの壁にもどっていた。
外へは二回目だが一回目は周りを見る余裕はなかった。春花たちが居た建物とは別に違う建物がある。その建物は館というより一階しかない校舎の様に見える。建物の前には妖怪が彷徨いている。
無言で歩く二人は迷わず建物に近づくが彷徨く妖怪たちは一斉に春花とハクを食い入る様にみていた。
「キツネダ…メズラシイ」
そんな声が聞こえて来るが無視をし、中へと入る。
「さむっ…」
春花の吐く息は白い。その寒さは段々と増し、かじかむ手足はそこから一歩も動かず震える手を何とか動かしハクの腕を掴む。
「どうした……っ大丈夫か!」
春花は倒れそうになるがハクはそれを受け止める。
冷たい……そうか春花は人間だ。
ハクは辺りを見回す。すると、真横の隣の扉から雪女が出てきた。
「あら、珍しい妖狐のご兄妹ですね。もう少しお待ちください」
「妹が体調悪いんだ何もない空部屋でもいいからどこか無いか?」
ハクは青白く紫色の唇をした春花を何もない部屋へと連れて行き抱きしめる様に温める。
「ここは…」
床に寝かせられ数分すると春花の血色は戻り目を覚ました。
「気が付いたか。春花は雪女の寒さで凍り付く一歩手前だったんだ。はぁ…気がついて良かった」
「ありがとう…でもどうやって?」
凍り付く手前の人間を溶かすのは容易では無い。現にこの部屋には布団やベッドも無い本当に空っぽな部屋だった。
「俺は妖狐だ。狐火何ていくらでも出せるそれより早く部屋に行くぞ。雪女が近くに居る時は寒くなるその時は言ってくれ」
「ハクは大丈夫なの?」
「ああ、妖怪同士はそれなりに平気なんだよ」
部屋を出るとそこには廊下に沿ってドアがある。
それにしても…外から見た時はあまり広くないと思ったけど…果てしない廊下だわ…
先を歩くハクは春花を気にしないで歩き続ける。
「ねぇここにレオンもいるのよね?」
「そうだな。レオンは一階の診療室にいるんじゃないか」
あれ?ここって一階しか無かった気がするけど…
考え事をしていた春花は、いきなり止まるハクにぶつかりそうになるが何とか止まる。
「着いたこの部屋だな」
ハクの視線の先には既に誰も居ないが部屋は散らかり放題で床には何かをこぼした跡が広がっていた。
ん?羽?




