準備
「ありがとうレオン…」
「いえ、それよりもどういう状況だったんです?」
ハクに詰め寄るレオンは顔は笑っているが声は笑っていない。
「ただのコクコの暴走だ。俺が眠ると勝手に身体を乗っ取られて、朝気がつくと春香の横で眠ていた。コクコは春花の血筋の匂いで光一郎と間違えている。それに、春花に会うまではコクコが俺の中に残っていることすら俺は知らなかった」
「あの時、口調が変わったのはコクコさんが反応していたから?」
「ああ…俺が起きているとき身体を乗っ取れないんだろう」
「それなら眠る時はどうしたらいいの…」
重々しい空間になりつつある部屋にパンッとレオンは手を鳴らす。
「お二人とも、今日はまだ始まったばかりです!春花さん用意ができましたので、今日からお手伝いをお願いしてもいいですか?」
「え…は、はい!」
「良い返事ですね。では…」
レオンは用意していた筆を春花の額に当てる。
「ふふっくすぐったい」
「良し!出来ました。今、額に書いたものは絶対に消さないで下さい」
手渡された鏡を見る。春花の額には読めない字が書いてあった。
「ねぇ、これって何で書いてあるの?」
「これは篆書って言う字体で書いてあるのは妖狐です」
「妖狐…なぜ、赤色なの?」
「ああ、それは特殊な草の液と私の血が混じっているからです!春花さんこれを付けてください」
春花はレオンから木箱を渡され中を見る。その中には狐の耳にそっくりな髪飾りが両耳あった。
「……気色悪い」
本物そっくりな耳はハクにとったら可愛いとも何とも思わずただただ気味の悪い代物だ。
レオンは春花に狐の耳をつける。
「どう?似合う?」
「とってもお似合いです。どう見ても妖狐ですよ!あっそれと、ハクの妹かいとこっていう設定にしました」
しかし、レオンは考え込む。そしてハクをじっと見る。
「ああですが、私は常に一緒にいる事ができないので…」
「何だよ」
「いえ、誰か春花さんと一緒にいてくれる常に暇な方がいればいいんですが……例えば、この館に住みついているけど何もしないで、お腹が空けばご飯を食べ喉が渇いたら水を飲む。そんな自由気ままな方は居はいませんか?」
「………」
ハクは聞かなかった様に部屋を出ようとするが目を光らせたレオンは逃がさないと言わんばかりにニッコリ笑いながらハクの肩に手をかける。
「そうアマさんが言ってましたよ。ハク」
「チッ…わーったよ!」
罰が悪そうにハクは顔しかめるが、嫌々承諾した。
部屋を出た三人は長い廊下を歩いていた。
「ねぇレオン、アマさんって誰なの?」
「アマさんはこの館にくる妖怪の怪我や病気を癒してくれます。その時はアマさんの助手をしたりしますが、基本は本当にアマさんが必要な時以外は、全て私が診てますよ」
「その妖怪ってもしかして…」
「ああアマさんはアマビエです今から会いに行きます」
「今から!?」
予想していなかった春花とハクは思わず声が重なる。そんな三人は階段を上がるのだった。




