壊れた髪飾り
二作目です。よろしくお願いします。
荒々しい足音が私の名を呼びながら近づいて来る。この足音の主の行き先は決まって私の所に来てはドアを静かに開けることを知らない義姉の礼子だ。
「春花!居るなら返事しなさい」
「はい」
「この髪飾り明日の昼過ぎまでに直して頂戴」
乱暴に置かれたのは髪飾りだ。礼子はそれだけ言っては部屋を出て行く。
春花は髪飾りを手に取ると申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。
その髪飾りは春花にとって実の母の形見だったのだ。紫色の薔薇が美しく大切に隠し仕舞っていたが、義姉に言われ買い物に行っている間に取られていた。
「お母さん…ごめんね」
母が生きていた頃は父も優しく色んなものを与えてくれていた。が、それも母が亡くなって慌ただしい日々が落ち着きを取り戻した。その頃から父は夜も家を空けるようなった。父からしたらやっと自由になれたのだろう。
母・蘭子の家系、桜井家はいわゆる華族だが分家。父・貞三郎の家系は事業はしてるが一般家庭よりかはお金持ち程度の三男だ。そんな父は母の婿養子になり結婚し娘の春花が誕生した。
父は母が亡くなってから1年半経った頃に子連れの女と再婚し桜井家の洋館に女と子供を連れてきた。
「仲良く一緒に暮らすように」
そう父から言われたがそんな事は一ミリたりとも再婚相手には無く春花は一番奥の日が当たらない部屋へと追いやられたのだ。
「これは直せないわ」
銀細工の髪飾りは髪留めの部分と飾り花が取れていた。春花の手元にある直す道具と言ったら裁縫道具しかない。かと言って使用人に頼んでも明日には直らない。
「あの人は私がなんでも出来ると思ってるのかしら」
最初は破れた着物を何かに作り変えなさいと言われ、苦戦したがリボンを作った。そんなこんなで裁縫はかなりの腕前になったが布ではない髪飾りにはその腕は意味がなかった。
「きっと明日は…」
次の日になると礼子は春香にしたら継母の明子を連れてやってきた。
「春花!私の髪飾り取った上に壊したわね!」
何も知らない明子は春花の味方になるはずもなく怒号が響き渡る。
「何ですって!」
「え…私は何も…してない」
「この恩知らずが!」
明子は思い切り春香を何回も平手打ちをし、昨日は朝食をとってから何も食べてない春花には体力など無く、抵抗出来ずに部屋から無理やり引っ張り出された。
止める使用人をものともせず明子は春花の腕を強引に引っ張り外に出ると敷地内にある誰も寄り付かない物置蔵へと春花を押し倒す。
「そこで反省しなさい」
春花は起き上がるが一歩遅く、明子は構わず蔵の分厚い扉を閉め施錠する。
「待って!出して…」
ガンガン叩いているはずの扉はびくともしない。
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